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紫吹蘭は紙箱を片手に、ホテルの廊下を歩いていた。 現在はソレイユツアーの真っ最中だが、蘭は東京に戻ってスパイシーアゲハの打ち合わせに参加してから、次のツアー先のホテルにやってきた。 半年間の全国ツアーに専念している状態ではあるが、他の仕事を…
スカイリム南東のリフテンにあるオナーホール孤児院は『親切者のグレロッド』と呼ばれる年老いたノルドの女が院長を務める孤児院だ。だが『親切者』とはたちの悪い冗談のようなもので、彼女はいつも子供達に対して厳しく当たる。 「仕事を怠ける者はもっと痛…
スターライト学園の寮は、光量はかなり抑えられるが、深夜でも完全に灯りが消されることはない。一般的な学校と違い、寮に住む全ての生徒はアイドルなので、帰りが遅くなる生徒もいるからだ。 労働基準法というものがあり、中高生の働くことのできる時間は厳…
多田李衣菜はロックを愛している。 ロックとは音楽の一ジャンルのことだが、彼女のいう『ロック』とはもっと幅の広いイメージだ。実際のところそれほど詳しいわけではなく、ロックという言葉の響きに憧れ、そうなりたいと思っている。 セックス・ドラッグ・…
・わたしの不真面目なセンパイ 1−1 ・わたしの不真面目なセンパイ 1−2 「やっちゃった……」 梓は教室で頭を抱え、昨日のことを思い出していた。いくら唯の追試を合格させるためとはいえ、楽しみにしていたお菓子の時間を奪って勉強を強要してしまった。 …
・わたしの不真面目なセンパイ 1−1 そうこうしているうち、梓は部室の前に到着していた。三階への階段を上ってきた正面にあるのは音楽室で、軽音部はその横の準備室を使っている。 「よし!」 ドアの前で気合いを入れ直す。今日こそしっかり練習をしよう。…
「どうしたの梓、溜息なんて」 放課後、掃除当番の梓は教室の床を掃いていた。声をかけてきたのは親友の純で、黒板を水ぶきしていた手を止め、梓に顔を向けていた。 ぼんやりとしていた梓は、一瞬遅れて何を言われたか理解する。 「溜息?」 「そう、出てた…
「よかった、まだホームルームは始まっていないみたいね」 気が付くと杏子は自分の教室の前まで戻っていた。握られていた手から力が抜け、マミと繋がれていた手が外れる。 「できればホームルームの後にもまた来てくれると嬉しいかな。じゃあね」 マミは笑顔…
「ん……あぁ……?」 まぶたの向こうに光を感じて目を開けると、それは見慣れた俺の部屋ではなかった。 頭がズキズキとして、記憶がはっきりとしない。自分がどこにいるのか理解できない。 「そうだ、昨日は……」 ゆっくりと思い出す。 昨夜、俺は新幹線で関西に…
佐倉杏子は一人で廊下を歩いていた。 本日の全ての授業は終わったが、まだ放課後ではない。授業一つ分の時間を費やして部活見学が行われている。 既に部活に所属している生徒は部室や活動場所で待機し、勧誘のため一年生を迎えることになる。小学校のクラブ…
ことの起こりは数日前に遡る。 普段、杏子は住居を点々としている。安いホテルやネットカフェなど、とにかく泊まれればどこだって構わない。 眠らなければ体が保たないというわけではないが、中学生の少女が一人で街を徘徊していると目立ってしまう。警察に…
見滝原の繁華街。 昼間はそれほど人が多くはないが、夕方になると学校帰りの学生で賑わう。大きなショッピングモールもあり、休日ともなれば近隣の町からも人が集まってくる。 そこを一人の少女が歩いていた。パーカーを羽織り、ジーンズ地のホットパンツを…
天使家、リビング―― 朝の早い海晴さんと、綿雪以下の年少組はもう寝室に行ってしまったけど、それでもまだ半分ほどの姉妹が残っている。きょうだいにはそれぞれの部屋があるけど、やらなければいけない宿題でもなければ、こうしてみんなで一緒の時間を過ごす…
「さっみー!」 今まで暖房の効いたファミレスの中にいたせいか、加奈子は公園で見かけた時よりも体を震わせている。 「つーかよー、こんな時間に追い出すとかひどくね? 客商売だろー!」 「お前がわざわざ聞かなきゃ、放っておいてくれたかもしんねーけど…
「あのさ、ちっと相談に乗ってくんね?」 どうやら俺は、女子中学生の相談に縁があるらしい。それまでの食い意地から空腹なのは明らかだったが、加奈子の相談とは「飯をおごって欲しい」ってことだった。 それ自体は予想できていた範囲だったのでそれほど驚…
ある冬の日のことだ。 俺は寒い空気に身をすくめながら、コンビニのレジ袋を片手に夜道を歩いていた。勉強に疲れ気分転換のために外の空気を吸いたくなって家から出て、立ち寄ったコンビニで手に取った漫画雑誌を読みふけっているうちに思いの外時間が経って…
トム「腹減ったなあ」 静雄「そっすね」 トム「静雄、二郎でも行かねぇか」 静雄「ああ、あのラーメン屋っすか」 トム「あん? てめぇ、いまなんつった? 二郎がラーメン屋だって?」 静雄「ラーメン屋っすよね? 大勝軒の横にある」 トム「二郎があのクソラ…
新宿―― 都庁の真下にその寺は存在し、奈落の底で笑っている。 人は「駆け込み寺」念仏寺と呼んでいる。 さて、念仏寺は特殊な目的を持った者が訪れる寺であるが、そうであるからと言って寺としての機能が失われているわけではない。様々な宗教的儀式を行うた…
自動ドアが開く。吹き込んでくる秋の風に、塚本八雲は少しだけ肩をすくめる。 そろそろ制服だけでは寒さを感じ始める時期だ。店に向かっている時はそれほどではなかったはずなのに、早くも暖房がつけられ風もない店内に長くいたせいだろう。 買った商品を袋…
楽しい旅行だった。 本来、遠くから見守ることしか許されていなかったお嬢様と、二人だけの旅行。それまでの日々のことも忘れ、私達は心から楽しんでいた。 そこに油断があったのだろう。 気が付いた時には、既にフェリーは沈みゆく真っ直中で、私にはお嬢様…
女同士の集団には、少し特殊なところがある。 大抵の女子はどこかのグループに入って、いつも決まったメンバーと過ごす。授業の合間の教室で机を囲んでいるグループ、トイレに行くために廊下を歩いている人たち、少しは入れ替わりもあるけど見慣れた組合せば…
この家がイベント好きだと知ったのはここに住むようになってすぐのこと。 僕とのコミュニケーションのためにと交換日記をしている時点でやっぱりちょっと変だし、誰かの誕生日があると毎回ちゃんと祝っている。誕生日なんて、少ない人数の家でもやらないこと…
『おはよう、リン』 毎朝私を起こすレンの声。深い水の底から私を引き上げてくれる声。夢と現実の境目から、私が誰なのか教えてくれる声。私を幸せにしてくれる声。『おはよう、リン』 私はリン。うん、わかってるよ。『おはよう、リン』 ぱちりと目を開けて…
深夜のこと。 「今日、私の――おやつがなくなった」 僕の部屋にやってきた霙姉さんは、まず最初にそう言った。 この家では3時のおやつが人数分用意されているはずだけど、それが足りなかったということだろう。なんとなく様子がおかしいなと気になっていた僕…
僕の名前はかーずSP。通称かーず。 製麺の天才だ。声優でもインタビューしてみせらぁ。 でもオナホだけはかんべんな。 「おっはよう!」 元気な声が僕の耳に飛び込んできた。今朝もいつものように目が覚める。 少しつり目気味の、元気そうな女の子の顔が僕…
高校一年の五月、私は住み慣れた関西を離れて東京に転校した。 小中学校に比べて高校生の転校は珍しい。目立ってしまうかと思ったけど、私の転入したクラスにはもっと目立つ子がいたのでほっとした。 美浜ちよ、という十歳の女の子。飛び級で高校に入った彼…