代原

穴埋め小説「ムービーパラダイス」57

「無理」 地面に座り込み、10分ほど試したが、触れそうな気がしない。俺はその場に寝ころんだ。 ちなみに肉体があった時から地面の上に立つことを当然として意識すらしていなかったため、霊体の状態でも地面を通り抜けたりしないという話をさくらに聞いた…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」56

破棄された地下鉄のホーム。明かりはついているが、それは弱々しく薄暗い。不自由があるわけではないが、なんとなく破棄されたものの持つ虚無感を感じられる。 そんな中、俺の目の前に着物を着た少女が座っている。白に近い薄桃色。牛乳に少量の血を混ぜたよ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」55

「ふぅ」 息を吐き、俺はネクタイを締め直すジェスチャーをする俺。本当はネクタイは無いのだが、なんとなくネクタイを締め直すような気分なのだから仕方あるまい。 「うう……」 「いつまでも床で寝てると風邪引くぞ」 さくらは地下鉄駅の床に仰向けになって…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」53

さてどのように調理すべきだろう。引きずり倒して無理矢理に襲いかかるのも良い。優しいふりをして途中で牙をむき、魂(こころ)を貶めるのも良い。何にせよ一時の快楽で動くのは良くない。持続する快楽こそが望ましい故、壊 ジッパーの落ちた俺、それを見つ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」52

いきりたった俺の股間を見てさくらが顔を赤らめ、その赤らんだ顔を見た俺は股間をいきりたたせる。一度エネルギーを与えると無限にエネルギーを生み出す永久機関というものがあるが、それはまさにこのような仕組みで実現できるのではあるまいか。 MK5! …

穴埋め小説「ムービーパラダイス」51

「あ、あのぉ……」 何か言いたげなさくらを無視して、俺は思案する。 さくらは俺の股間を見て顔を赤らめており、表情を強ばらせる。そしてそれが『だめ、お兄ちゃん』という表情に近づけている要素となった。 それはつまり、この表情が股間を見ることによって…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」50

意外とこの女には素質があるのかも知れない。 何の才能かって? そんなのは決まっているじゃないか―― では続ける事にしよう。 現在、さくらは正座を崩したような姿勢で、右手を床につけて右側にしなだれている。しかも着物。薄紅色。詳細に言うならばナース…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」49

「まずその座り方が失格だ」 「はあ」 自分が間違っているという自覚が全くない。萌えを間違えるという事がどれほど恐ろしいことなのかわかっていないのだ。言ってみればシェフの気まぐれサラダを注文して出てきたものがシェフが気まぐれに作ったスープ料理…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」48

「やりましょう」 と言われたので、俺はサラリーマンレイピストのようにニヤニヤと笑いながらネクタイをゆるめる動作をする。ヘラヘラと笑いながら、怪しい笑い声を漏らしたりもする。 いや、むしろインテリやくざと言った方が適切か。借金のかたに連れてこ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」47

「どうしても来ていただけませんか?」 「やだ」 「はぁ……」 うーん、とうなるさくら。 「凌辱がないでしょー」 「何?」 「いえ、なんでもないです……」 しょんぼりとするさくら。 ……つかみ所のない女だ。というか、意味がわからない。 「凌辱がないでしょ………

穴埋め小説「ムービーパラダイス」46

自分の肉体が運ばれて行ってから、俺はその場に立ちつくしていた。 しかし、この先どうしたらよいのだろうか。漫画などでは、このあと死神のようなモノが現れて俺が死後の世界とやらに運ばれていくというのが定説だが、現れる様子は無い。そもそも撃たれて肉…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」45

俺が目の前で倒れている。 と言うことは、ここにいる俺は何だ。誰も俺に気づかず、誰も俺に触れられない。 「すげぇ、透明人間だ!」 ポジティブに受け止めてみる。 「ふぅ……」 しかしそれも一瞬で終わる。この状況、明らかに俺が死に、その亡霊が俺という状…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」44

記憶が私に嘘をつく。 やがて、岡田君と俺は俺の家の前に到着した。 そこには人垣が出来ていた。囲んでいるのは、ちょうど俺が隠れていたせいで穴だらけになってしまった車だ。 なかなか珍しい状況だが、ラッパによって飢巣譚が来たことに気づいている区民は…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」43

裏切られた気分だった。ここまでネタを披露してノーリアクションというのは、いくら何でもやりすぎだ。 そもそも、ここに遅れてきたのだって飢巣譚の襲撃を受けた事が原因で、俺は何も悪くはない。そう考えると怒りがわいてきた。 「岡田ぁっ!!!」 サイコ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」42

「悲しい時ー!」 叫ぶ俺。気分を盛り上げる為に相方に同じように叫んでもらいたいものだが、悲しいかな俺はソロ芸人。 「出てきた料理がメニューの写真と違った時ー!」 相方が『悲しい時ー、出てきた料理がメニューの写真と違った時ー!』と叫ぶ姿を想像す…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」41

物真似が駄目だと発覚した以上、やはり面白い芸人を真似るしか無いだろう。こうなったら個人的に嫌いなバナナマンなんか考慮しなくてはいけないだろうか。 とは言え、奴らはコンビである。コンビのコントを真似るのは難しい。 ちなみに俺が嫌いなのは、バナ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」40

岡田君が中国映画に反応した。意地になっているせいか再び無反応っぽい状態に戻ったが、一瞬だけでも反応したのは確かだ。今までどんな事にも反応しなかった岡田君が唯一反応した中国映画にかけてみてはどうか。 あの映画の面白い点はやはりワイヤーアクショ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」39

まず、髪をアフロにした俺。 「俺はターケル様だぜ」 と、マニアックコップ2に登場した絞殺魔ターケルの声真似をする俺。タイトル同様マニアックな映画であるため、岡田君はこのキャラを知らないだろう。しかもこの声真似はテレビ吹き替え版である。マニア…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」38

コロッケが駄目となると他の四天王だ。次に露出が多い気がするのは清水あきらなので、清水あきらについて考察しよう。 清水あきらはコロッケと同様、表情などで笑わせるタイプの物真似師。セロテープを多用し顔面を変形するなど、コロッケよりもビジュアルに…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」37

対向車とすれ違ったタクシーは、細い道を走り続ける。客がいらついているのは歴然で、この後さらに遅れるような事があれば客は憤慨することだろう。 だというのに、更に対向車がやってきた。今度はそれほど時間がかからなかったとは言えども、客の苛立ち拍車…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」36

まずは空気椅子をし、自分の前方で肩くらいの高さに両手を伸ばす。そして、両手を軽く握りこむようにする。 非常に辛い姿勢だが、しばらくはこのままの体勢でコントをしなければならない。いや、コントではなく人物模倣だが。 ひとまず、宣言しようか。 「タ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」35

封印指定芸人。NG大賞、いっこく堂、マギー、鉄拳。 あまりのその魔力に芸人協会よりその能力を制限されたわけではなく、ただ単に岡田君にウケなかったから俺が封印したものだが。 ともかく、これらの芸人を除外して他の芸人を考える事にしよう。 一人であ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」34

マギーの芸はいっこく堂と同様に小道具が無ければやはり面白味が半減する為、俺は小道具を使わない芸人からネタを得ようかとも思ったが、小道具を使わなくてもその面白要素を再現できれば問題ないと気づいた。そのため、俺はあらゆる芸人の芸を模索し、片っ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」33

一人の芸人というと、とりあえず思い出されるのはマギーだ。マギーはあのマギーの弟子で、手品を得意とするピンの芸人。それ故、マギーの再現には手品アイテムが必要だ。 ――と思われがちだが、実はアイテムを使わなくともマギーの再現は可能だったりする。実…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」32

とりあえず、ショートコントは捨てる事にしよう。一人で演じるという制約はあまりにも大きいし、そもそもネタの吟味など用意が必要となるものだからだ。 一人で出来るネタというのは何だろう。こうなったら、思いついたものを無差別に行おう。 ともかく、一…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」31

俺は依然憮然とした表情のままの岡田君を見て画然とした。俺は何をやっているのだろう。俺は自分の発想が面白くて笑っているが、岡田君にはその面白さが伝わっていない。なぜなら俺は何もしていないに等しい故。 このままではいけない。始めた以上、あまり面…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」30

俺は途方に暮れていた。 「……………」 むすっとした岡田君。俺は岡田君のお笑いの趣味がわからないのである。 お笑いというものは意外とバリエーション豊富である。わかりやすいコントもあれば、通でも面白いかどうか意見の分かれるシュールなどもある。 とりあ…

穴埋め小説「ムービーパラダイス」29

前回更新からあまり時間経ってないので読み飛ばし注意

穴埋め小説「ムービーパラダイス」28

「仕方ない」 俺は弾倉を外し、スタン弾から別の弾に切り替える。今度は砂鉄を圧縮し固めた弾で、これは目標にぶつかる事で砕け散る為、怪我などをさせることはあまりない。ただ、砕ける前の状態は普通の銃弾と大差ないわけで、スタン弾以上の威力がある。 …

穴埋め小説「ムービーパラダイス」27

全くツイてない。 そう、俺は吐き捨てた。 とりあえず、状況を整理してみよう。ツイて無いとしか言い表せないこの状況を。 まず、俺の手にはビデオテープが握られていた。裸の状態ではなく、きちんとパッケージングされたビデオテープだ。 そして、俺の周囲…