穴埋め小説「ムービーパラダイス」53

 さてどのように調理すべきだろう。引きずり倒して無理矢理に襲いかかるのも良い。優しいふりをして途中で牙をむき、魂(こころ)を貶めるのも良い。何にせよ一時の快楽で動くのは良くない。持続する快楽こそが望ましい故、壊


 ジッパーの落ちた俺、それを見つめ震えるさくら。状況的にはこの場で押し倒すのがセオリーなのだろうが、この完成はいわば事故のようなものであり、俺が生み出した萌えシチュエーションではない。ならばここで手を下すのは得


 そう言えば、どうして俺はこんなところにいるのだろう。最初は岡田君が見つけた良質なビデオ屋を探して旅をしていたはずだ。そして、長い苦難の旅の果てにそのビデオ屋を見つけた。その旅の困難さは指輪物語の旅にも匹敵する



し方というのは重要である。いや、事によっては壊さない事も重要である。幸福の総量を考えて見よ、幸福の総量が少しでも多くなる事こそが望ましい。それが幸運強化兵であり絶対幸運圏。ディランドゥ。ああ、なんと萌える光景で


策ではない。米を粗末にする事がお百姓さんに申し訳が立たないように、途中まで作り上げたさくらを未完成なまま食す事はそこまで作り上げた俺に申し訳が立たない。アイムソーリー俺。今の状況は、テレビの修理中にテレビを叩い


のだが、今はおいておこう。ともかく、俺は一つのビデオを手に入れ、しかしながらビデオデッキを失い、再生する機械を求めてムービーパラダイスに向かおうとした。しかし、その途中で障害が現れた。その名は飢巣譚。ウェスタ



あろう。今のさくらはあらゆる要素を備えている。羞恥、背徳、恥辱、悦楽、萌。言ってみればフィフスエレメント。ここまで狙いすましたかのような萌えを発散するさくらは、むしろ誘っているのだろうか。否、誘っている。どちらか


たらなぜか直ったという状況であり、テレビならまだしも女性というものは精密機器と同じであり、偶然に良くなったものは偶然に壊れてしまう。つまり、綿密にお膳立てをしなければ予期せぬ事態を引き起こすのである。よって、完全


マニアが集まって結成された暴走族で、馬に乗って道路を爆走する奇異な集団である為、この魔界都市でもよく知られた存在である。激しいウェスタンとの戦いでの負傷により、俺は今のような霊体となった。その状態で出会ったさくらと



というと否誘である。ああ時代は俺に何を


に作り込まねばいけない。アクセルがイカれた車は事故を引き起こさないがブレーキがイカれた車は事故を引き起こすように、完全でないものは危険を孕



 ――止まれ。止まれ。止まれ。止まれ。


 ――止めろ。止めろ。止めろ。止めろ。


 ――あまりに萌えたせいか混乱している。カット。思考を止めよう。



 ――三番停止。


 ――二番停止。


 ――六番停止。


 ――七番停止。



「く……」
 あまりの状況に思わず分割思考してしまった。分割思考とは思考する部分をいくつかに分割して複数の事を考える能力で、同時に大量の事を考えることができる。
 まあ、それはどうでも良いのだが。
 ともかく、この状況を考えなければならない。萌える体勢で萌える台詞を繰り出すさくらは、俺にしてみれば全裸と同じ状態で放置されているのと同じ様なものだ。
 しかし、この場で手を出すのは良くない。別にさくらの為にとかそんな偽善ではなく、不完全な状態では俺が後で後悔するからだ。何事も妥協は良くない。
 そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、不安げな表情のさくらが俺を見上げる。怯えているのだろうか。
「何も……しないの?」
 ――なっ!
 それは何かを期待しているというのだろうか。否、己の身を案じているに他ならないと俺は見た。もし誘っているとかそんなのだとしたら、俺はもう駄目であり、虎王を出すほどのエレクトっぷり。
 ちらちらと俺の表情をうかがうさくら。怯えであり、切なさであり、期待なのかも知れない。誘っているのだったら俺は俺を抑える気力は無い。
「――ぽ」
 顔を赤らめるさくら。ああもう駄目だよ、この状況で抑えられるはずがあるか馬鹿野郎。
「なめるなよ鎖躯羅! 燃えているのはおまえだけではない!」
 俺は一瞬で白い学生服を脱ぎ捨てて全裸になった。
「とても言葉にできぬ!」
 再開の瞬着!