穴埋め小説「ムービーパラダイス」29

 前回更新からあまり時間経ってないので読み飛ばし注意


 飢巣譚との戦いが終わった数分後、俺はようやくムーパライスの近くまでやってきた。
 遠くから岡田君の姿が見える。別れてからけっこう時間がたっているせいか、妙に落ち着かない様子で待っているようだ。
 あまり待たせるのもいけないので、俺は岡田君のところまで駆け寄る。
「ごめん、家を出たところで飢巣譚に遭遇して――」
「遅いナリ」
 顔を上げ俺の方に視線を向けると、言い訳を遮るかのように言い放つ岡田君。
「う――」
 思わず言葉を失う俺。
「遅いナリよ、本当に……」
 責めるような口調の岡田君に俺は思わず言葉を失う。普段温厚な岡田君にしては珍しく、機嫌が悪いように見える。目も合わせてくれない。
 岡田君が怒った事などほとんど記憶にない。以前に怒ったのはいつだろう?
「あ」
 かなり前の事だが、岡田君が怒っていたという記憶を思い出した。理由は既に覚えていないが、絶叫しつつ日本刀を振り回す岡田君の姿。
 理由はそれほど大した事では無かった気がする。岡田君の趣味に関連した何かを安藤が誤って破壊したとかその程度だったと思うが、まるで憑り殺さんとする悪霊のように安藤の命を数日狙い続けたあの姿は思い出しただけでゾっとする。


「KILL、KILLナリー!」


 その姿。連想されるものは、キテレツ大百科のカラクリ武者。


 さて、そんなわけで岡田君の機嫌を損ねる訳には行かないのだ。どうにか岡田君の怒りを収めないといけない。
 そうだ、病気の者でも笑う事によって体調が良くなるという話がある。それとは全く関係ないが、笑えば怒りが収まる可能性が高い。
 ならば、全身全霊を以て我がコントをお見せするまで。
「まずはOKシーンから」
 俺はみのもんた風に言うと、陣内っぽく岡田君に背を向ける。
「そいつはおかしいぜ!」
 と言いながら振り返るが、岡田君は無反応。
「続いてNGシーン」
 クスリともしてくれない岡田君に怯えつつ、俺は再び岡田君に背を向ける。
「そいつはおか、おかおかすいませんもう一回」
 と、スタッフに向かって苦笑しながら人差し指を立てるアクション。さあどうだ、俺のコントNG大賞はっ!?
「……………」
 ノーリアクションであった。
「続いてローカル局のNGシーン」
 ここからは少し自信がある。
「るーるる、るーるるーるるるるどぅわっどぅわ。福岡めんこいテレビから」
 と、マイクの構えをして前傾姿勢になる。
「すごい台風が来てます!」
 頭に手を乗せる。意味は合羽のフード部分を手で押さえるゼスチャーである。さあどうだ、俺のコントNG大賞ローカル局バージョンはっ!?
「……………」
 ノーリアクションであった。