今日の長門有希SS

 前回の続きです。


「結局、何をしていたんだ?」
 長門にこってり絞られ、朝比奈さんも落ち着いてからふと疑問が生じた。
 聞こえて来た会話の流れを素直に解釈するならば、ハルヒは朝比奈さんの胸を揉んでいたようにしか見えなかったが。
「おっぱいを揉んでいたのよ」
 そのままかよ。
 一体どういう理由があれば、朝比奈さんの胸を揉んだりすると言うのか。
「ほら、揉めば大きくなるって言うじゃない。みくるちゃんの胸がもっと大きくなったら面白いと思うでしょ?」
 既に朝比奈さんの胸は豊満に成長している。これ以上大きくなったら、ビックリ人間レベルになってしまうだろう。
 そういえば、未来の朝比奈さんは今よりも更に成長していたようだが、ひょっとすると……いや、想像するのはやめておこう。
「そんなバカなこと――」
 言葉は俺の意志とは裏腹に途中で止まった。
「有希、何してんの?」
 ハルヒが俺の隣を不思議そうに見ている。俺の口を覆った長門を。
「なんでもない」
 長門は俺の口から手を離し、そそくさと自分の席に戻っていった。
 はて、何がしたかったのやら。


 それからいつも通り何事もなく活動も終了し、例によって俺は長門の部屋に行く。
 そして玄関に入りドアを閉めたところで、普段とは違うことが起きる。
「ちょっと待って」
 玄関に鞄を置くや否や、長門はカーディガンや制服の上に手をかけ、あっという間に上半身だけ下着姿になる。
「な――」
 何をしているんだ、長門。と言ったつもりだったのだが驚きのあまり言葉が出ていなかったようだ。
「揉んで」
 長門は俺の手を持ち、自分の胸へ誘導する。心臓の音がとくんとくんと伝わってくる。
 ちょっと待て、一体これはどういうことだ。いくらなんでも異常事態である。そりゃ長門だって俺だって性的な行為には何も抵抗はない。むしろ性行為をしたまま一生を送れたらそりゃなんて幸せなことだとは思う。
 しかし、いくらなんでも長門は部屋に入るや否や服を放り出して性行為に至るほどがつがつしていなかったはずだ。
 って……なんだこりゃ。
長門、心なしか胸が大きくなっているように感じられるのだが」
「五センチほど大きくなっている」
 ……だよな。
涼宮ハルヒは揉むと大きくなると言っていた。だから今、胸を揉むと実際にサイズが――」
「大きくする必要はない」
 だから長門はあの時、俺の言葉を遮ったのか。
「それに、もし今世界中のどこかで性行為に至っているカップルがいたとしたら、それも胸が大きくなってしまうってことだろう? なんとかしないとまずいぞ」
「一揉みで一ミリしか変化しない。よほど重点的に胸を揉まなければ数日は気づく者はいない」
 しかしそれでも問題だ。地球のどこかは今現在夜であり、そこで営んでいるカップルの数を考えると、ハルヒのあの発言から今までかなりの人数に影響を与えた恐れがあるからな。
「世界を元に戻すにはどうすりゃいいんだ?」
「あなたがメールで『胸が揉んで大きくなるのは都市伝説』と送ればいい。そうすれば既に大きくなっている分もなかったことになる」
 簡単だな。
 携帯を取り出し、メールを打とうとした俺の手を長門が遮る。
「どうした?」
「試してからでも遅くはない」


 それから俺は長門の胸を三十センチほど大きくしたあと、普段あまりできないような行為を堪能してからハルヒにメールを送った。