今日の長門有希SS

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 今日は見慣れた長門の部屋に大人数がひしめいていた。ハルヒの発案した勉強会は数日に及び、宣言していた通りに長門の部屋を使用する事になったからだ。
 現在ここにいるメンバーは正規のSOS団員の他には準団員の鶴屋さん。国木田は初日で根を上げて参加しなくなった谷口とは違って、放課後の勉強会には「一人でやるよりも集中できるから」と継続して参加していたのだが、さすがに長門の部屋に来るのは躊躇われたらしい。
 ちなみに例のコスプレデーはハルヒの気まぐれであれからまた一度実施されている。その時は俺は女装させられる事は無かったが、国木田がメイド服になっていた。
 普段から女顔の奴だとは思っていたが、女装をすると本当に女の子のようになってしまった。それには女性陣もすっかり感心してしまい、化粧を施したり本格的に国木田をいじっていた。
 それはともかく、俺達が勉強をしているとチャイムが鳴った。いつものように俺が玄関に出て行くと、そこにいたのはクッキーらしき箱を持った朝倉の姿があった。
 団員が勢揃いをしていた事を知らず、例によってお茶でも飲みに来たようだ。
「あれ?」
 玄関の様子を見て首を捻る。
「もしかして、お邪魔かな?」
「そんなことはないわよ」
 玄関に出てきたハルヒに「いいところに来たわね」と引っ張り込まれて、なんだかんだで朝倉も巻き込まれるハメになった。
 長門や朝倉にとっては勉強するって行為に有益性は全く無いのだろうと思っていたが、意外にも朝倉は「たまにはこんなのもいいわね」と楽しそうに参加している。
「いつも自転車で素通りしている道を、たまに散歩しながら歩きたくなる事ってあるじゃない?」
 気まぐれでそうしたい時もあるって事か。なんとなく納得した。


 それからしばらくして、事前に買い出しをしておいた材料で昼食を食う事になった。勉強中なので料理に時間をかけるのも勿体ないので、サンドイッチを作りながら食う事になった。
「で、この梅干しは誰が持ってきたんだ?」
 余所見をしている間に卵サンドの中にいつの間にか仕込まれていた梅干しの種を吐き出しながら見回す。一応は質問の形を取ってはいるが、こんな事をやりそうなのは一人しかいない。
「今の内に名乗り出たら怒らないぞ」
「なんであたしを見てるのよ」
 そりゃ、他に犯人が思い浮かばないからだ。
 とりあえず朝比奈さんや古泉なら仕込んでいる最中で気付くだろうし、長門はやるはずが無いし、鶴屋さんは――
「ごっめーん、あたしがやったのさっ」
 と、背後に隠していた梅干しのパックを置いた。意外な伏兵がいたもんだ。
「キョ〜ン〜、人を疑っておいて謝りもしないのかしら?」
「すまん。てっきり」
「謝ってすんだら警察はいらないのよ! あんたは罰として三時のお菓子を買ってきなさい、あれじゃ足りないから」
 あれとは朝倉の持ってきたクッキーの事であり、どうやらハルヒの中ではもうSOS団の所有物って事になっているらしい。本来は長門に持ってきたもののはずなのだが……


 さて、そのようなわけでお菓子を買うために外を歩いているわけだが、少しばかり妙な状況になった。
「どうかした?」
 チラリと見ると、長門がこちらを見返してきた。
「いや、別に」
「そう」
 長門は前に向き直る。
 なぜ長門が来ているかと言うと、必要な買い物を思いだしたから一緒に行くと言いだしたからだ。まあそれだけなら大した事無いんだが、
「あんた、変な事を考えてるんじゃないでしょうね?」
 ハルヒがぐいっと腕を引っ張り、口をとがらせて俺の顔を見てくる。長門と二人だけだと俺がセクハラをするんじゃないかとか言ってくっついて来た。
 確かに長門に対しては同意の上では特殊な行為に至る場合もあるが、長門はすんなりそれを受け入れてくれる。だから、無理強いで押しつけたりはしない主義だ。
 なんて事を言えるわけもないので、俺はただ黙ってため息をつくだけだ。
「そうだ、せっかくだから夕飯の買い物もしてく?」
 確かに人数が多いから飯の材料を買っても問題は無いだろう。
「ま、鍋でいいかしら」
 以前にも食ってワンパターンではあるが、やはり鍋料理ってのは王道である。確か肉は残っていたはずだから、そんなに買い足す必要はないな。ところで鍋はどうする?
朝倉涼子が大きい鍋を持っている」
 そうか、そういや前に料理入れて持ってきた事があったな。確かカセットコンロも持っていたような……
「ねえ」
「どうしたハルヒ?」
「なんでキョンがそこまで知ってんのか教えてくれない?」
 しまった、ついうっかり。