今日の長門有希SS
前回の続きです。
さて、カップルのふりというのは何をするのかね。そこまでしてここを調査するより他をあたるべきだとは思うが。
しかし、ハルヒがここでUFOを見ることができるのではないかと期待しているのなら、他の場所よりもUFOが現れる可能性が高いとも考えられる。なぜならハルヒがそう期待しているからだ。
となると、ここに長居するのはまずい。さっさと他の場所にいかなければ。
「ハルヒ、やっぱりここは出ようぜ」
「なによ」
ハルヒが口をとがらせる。
「あたしと恋人同士は不満だっての?」
別に不満だとか不満じゃないといった問題ではない。ハルヒが期待しているのだから、ここにいると本当にUFOが現れてしまう可能性があるのだ。
しかし、ハルヒを不機嫌にさせてしまうのもよろしくないと俺は知っている。ここは下手に反対しないでハルヒのわがままに付き合ってやり、さっさと切り上げてしまえばいい。
「怪しまれても困るからさっさと帰るぞ」
カップルではないとばれたら覗きに来ていると勘違いされちまうからな。別にそれでどうこうされるわけじゃないと思うが、トラブルになる要素は少ない方がいい。
「わかったわよ。それじゃ、早く回るわよ」
と言うとハルヒは、俺の手を掴んでぐいっと自分の体に引き寄せた。
「おい!」
「静かに。変に声を出したら注目されるわよ」
周囲からの視線を感じた。ケンカでもしていると思われたのだろう。
「逃げるわよ」
いきなり怪しまれてしまったので、俺たちはそそくさと移動する。まあ追ってくるような者もおらず、すぐに周囲のカップルに紛れてしまった。
落ち着いてしまうと、色々なことに気づかされる。ハルヒが引っ張る形になっているが腕を組んでいるような状況であり、二の腕にハルヒの胸が当たっている。
「ほら、あんたも近づかないと怪しまれるでしょ」
などと言われるままハルヒに体を寄せるのだから尚更である。控えめな長門の体とも、豊満な朝比奈さんとも違うハルヒの胸。極端な二人と一緒にいるから普段はあまり目立たないが、ハルヒはそれなりに魅力的な体型をしている。まあ俺としては長門の体で満足しているわけであるが、一般的にはハルヒや朝比奈さんのような体型が好まれるのだろう。
「黙ってないでなんか話しなさいよ」
そうだな。哲学についてでも語るか?
「そういうのは古泉くんに任せておけばいいのよ。夜の公園でそんなこと話すカップルなんていないでしょ?」
「そこまで徹底しなくてもいいと思うけどな。だいたい、周りの奴らは俺たちの会話なんて聞こえちゃいないだろ」
好き勝手に盛り上がっている周囲の人々を見ると、そこまでしなくてもいいんじゃないかという気になる。
「だめよ。そういう細かい気のゆるみが大きなミスに繋がるの」
しかしハルヒは完全を求めるところがある。そんなことじゃ気づかれないと思うが、ハルヒはそうじゃないらしい。
「こういう場合は男がなんか面白い話をして、女はそれを聞いて愛想笑いしてるもんって相場が決まってんのよ」
ずいぶん偏った考え方だな。
「いいから早く話しなさい」
へいへい。
というわけで、俺たちは適当に会話をしながら公園内を歩くことになった。