今日の長門有希SS

 週末にはSOS団での不思議探索が行われる。特筆すべきこともなく、ただただ俺の所持金を吸い取るイベントである。
 誰かの視線を気にすることなく大手を振って長門と二人で街中をぶらつける貴重な機会ではあるのだが、毎回長門と二人という組合せになるわけではない。普通にクジを引くより確率は高いのだが、長門と別々になることだってある。
 今日はたまたまそんな日だった。午前も午後も長門とは別の組合せであり、一日中離ればなれ。解散してから二人で買い物でもして帰ろうと思いきや――
「まだ終わらないわよ」
 ハルヒがとんでもないことを言いだした。
「もう夕方だぞ、いつもならこれくらいの時間に終わってるじゃないか」
「だからよ。いつも不思議な物が見つからなかったのは、もしかしたら終わる時間が早すぎたのかも知れないじゃない。UFOだっていたとしても昼間は気づかないでしょ!」
 不思議な奴らなら既に近くに三人もいるんだけどな。それに、その不思議な奴らはハルヒが不思議な物を見つけちまうのを不都合だと考えて気づかないようにしている。
 だから、今さら夜まで探索しても無駄だと俺はわかっているのだが、ハルヒにそれを説明することはできないし、見回してみてもハルヒの決意を曲げさせられるような奴はここにはいない。
「じゃあ組合せを決めるからさっさと引きなさい」
 ハルヒは有無を言わせず俺の顔の前に爪楊枝で作ったいつものクジを突き出す。五本のうち二本は印が付けられており、印付きと印なしで二つのグループに分かれることになる。
 突き出されたうちの一本を引くと赤く印が付いていた。続いて引いたハルヒも印があり、この時点で組合せが決まってしまった。
「それじゃあこれで決まりね。キョンとあたしはあっち、みんなはあっち側ね」
 そう宣言すると俺の手を引いてさっさと歩き出す。助けを求めるように残ったメンバーを見ると、戸惑いながらも気の毒そうな表情を俺に向けている。
 そりゃ、誰だってこんなやる気満々のハルヒに付き合わされたくないだろう。気の毒だと思っているなら代わって欲しいもんだ。
「UFOってどこに行けば見られるのかしら? 山?」
 勘弁してくれ。もう暗くなっているし気温だって寒い、こんな状態で登山はご免だぞ。
「じゃあ森の中かしら……」
 ハルヒはしばらく考えるような仕草をしてから、
「そうだ、あそこはどうかしら」
 視線の先を追うと、そこには大きな公園があった。確かに人混みの中よりはUFOを目撃しやすいシチュエーションだ。目撃しちまったら困るんだけどな。
「入るわよキョン
 ここまでやる気になったハルヒに抵抗できる奴などいない。まずい状況だとは思いつつも、俺は公園に引きずり込まれてしまった。


 公園の中はまずい状況だった。いや、想像していたのとは別の状況で。
「……」
 予想外だったのだろう。ハルヒも公園に入ったところで足を止めている。
 昼間とは違い、公園の中は腕を組んでいる男女だらけだった。
ハルヒ、ここれはちょっとまずくないか……」
 この状況はハルヒも予想していなかっただろうし、UFOが目的なら不本意なはずだ。さっさと公園から出よう。
「そうね」
 しばらく考えてからハルヒは俺に顔を向ける。
「このままじゃ怪しまれて調査できないわ。仕方ないからあたし達もカップルのふりをするわよ」
 なんだって?