今日の長門有希SS

 登校した後の過ごし方と言えば、谷口や国木田と無駄話もする事もあるが、圧倒的に多いのは後ろの席に鎮座する我らが団長様とどうでもいい話をする事である。毎日の事であるため特にこれといって中身のあるような話をする事は少なく、始業までの退屈な時間をただ漫然と潰すだけだ。
 しかし今朝は教室に入ったところでハルヒと俺の席に座った朝倉が何やら話し込んでいるのが目に入り、谷口達も教室にいないので俺は何となく手持ちぶさたになって教室から出た。廊下に出たものの特に目的は無く、ただ何となく廊下をぶらついていると玄関の方からカバンを持った長門が歩いてくるのを見付けた。
「よう、遅かったな」
 遅いといっても別に遅刻になるような時間でもないのだが、朝倉と一緒に登校する事もある長門にしては少し珍しい。と言うか、朝倉はさっき教室にいたよな。
「今日は日直だと聞いた」
「そうか」
 だから別々に来たって訳か。まあ普段から一緒にいる事が多いし、わざわざ時間早めてまで一緒に来る事もないよな。
「あなたは?」
 何をしていたって事か。いや、別に何をしていたわけでもないんだが、話し相手がいなかったから教室にいても退屈だっただけだ。
「そう」
 長門はしばらく俺の顔をぼんやりと見つめる。
「それなら、わたしが相手になる」
 話し相手になってくれるってのか。
「そう」
 長門とは長く一緒に過ごしているが、会話をしないでただ何となく過ごしている事も多い。しかし今回は話し相手になってくれると言うのだから、いつもと違って何か話してくれるのか少し楽しみになった。
「頼む」
「わかった」
 ゆっくりと首を上下させる。
「……」
 長門はじっと俺の顔を見つめている。
 えーと、どうすりゃいいんだ。
「何か話して」
 聞き役になってくれるって事か。
「……」
 頷く。


 それから始業まで長門と時間を潰す事になった。いつも二人でいる時と同じような過ごし方であり、特に新しい事も無いのだが、何となく時間があっという間に過ぎるような気がするのは気のせいではないだろう。
 しばらくして、バタバタと走ってきたハルヒや朝倉も合流して話していたが、チャイムが鳴ったところで「トイレ行くんだった」と駆けていくハルヒにため息をつき、俺達は教室に戻った。