今日の長門有希SS

 ある日の休日、俺は長門と一緒に図書館に来ていた。普段はソファーで寝入ってしまう事の多い俺だが、今日は長門の後に続いて本棚の間を徘徊している。
「それ」
 そう指差すのは、長門の身長では届かない一冊の本。俺の身長でもギリギリだ。
「これか?」
「その隣」
 指示された本を背伸びして取る。
 これで左手に持つ本は三冊目。
「持つ?」
「いや」
 少しかさばるが持てないほどじゃないさ。
「でも、まだ何冊か集める」
「……頼む」
 長門に持たせるのも忍びないが、仕方ない。


 今回こうして図書館に来ているのは一時間ほど前の何気ない会話が原因である。
 朝食の後、いつものようにのんびりと過ごしていたのだが、読書をしていた長門に何気なく問いかけた。
「何か面白い本はないか」
 と。
「ここには無い」
 そう言えば、普段は部室に置いているのでこの部屋には本はない。あるのは長門が今読んでいる本や俺が持ち込んだ雑誌くらいだ。
「図書館に行けば、あなたの好みに合いそうな本もある」
 とまあ、そんな理由で図書館にやって来た。ここのところ図書館に来ていなかったような気がするのでちょうど良かったのだが、長門は先程から俺の本を何冊も選んでいて、自分の本はまだ探していないようだ。
「あれも」
「もう五冊目だぞ」
 そう言えばこの図書館は一度に何冊借りられるのだろうか。それより、一回で借りて読めるような冊数でもない。
「……」
 長門はぼんやりと俺の顔を見る。
「気合いで読めばいい」
 長門なら部室でも本を読んでいるから大丈夫かも知れないが、俺が放課後に部室で読書をしていたらハルヒに何て言われるかわかったもんじゃない。ここまで多いと休み時間や学校から帰った後の時間も本を読まねばならず、長門と一緒に過ごす時間も無くなってしまうような気がするのだが。
「……そう」
 くるりと踵を返す。長門は今まで通ってきた場所をスタスタと歩き、少し前に立ち止まった気がする場所で本を一冊持って背伸びをする。
「……」
 届きそうに無いが……何をしているんだ?
「多すぎた」
 どうやら本を借りすぎて時間が無くなるのは長門にとっても望むところではないらしい。俺はその手から本を受け取り、先程の場所に戻す。
 それを見届けると、再びスタスタと歩く。
「まだ戻すのか?」
「厳選した一冊を借りる」


 それから集めていた本を戻し、長門としばらく話してから一冊選んで借りていく事にした。ついでに長門も本を借りていく事になり、結果的には俺のためというよりも長門のために来たような感じになった。
 ちなみに長門の選んでくれた一冊だが、長門が迷って選び抜いただけにかなり楽しんで読む事が出来た。