今日の長門有希SS

 大人になっても少年らしさの残る男に女は惹かれるんだ、とどこかで聞いた事がある。皮肉屋で理屈っぽいと思われているこんな俺にだって少年らしさは残っているさ。


 皮を剥けば大人。皮を戻せば子供。


 そう、男ってのは便利なもんなんだ。皮の鎧を着るか脱ぐかで大人と子供のどちらにもなれるんだからな。どこで取ったデータかは知らないが、日本人男性の七から八割がこういう体質らしいね。もっとも見栄を張る男も多いから、正確な数値とは思えないが。
 もしかしたら、皮が剥けている奴ってのは全て手術の賜物であり、元々は皮を身につけている方が正しいのかも知れない。手術で無くした方が良いってのは泌尿器科の陰謀で蔓延した考えなんじゃないか、ってな。元々バレンタインにチョコレートをプレゼントする習慣もお菓子業界が流行らせた事だ。それと同じさ。違うか?
 そもそも、常に皮をかぶっている方が感度が良いらしい。皮がない奴は常にズボンの中で刺激を受けていて、耐久力が付くって話だ。
 だったら俺は、使う時以外は身を守っていても良いと思うんだ。だって、快楽を感じなくなるってのは問題だろう? 確かに普段から過保護にしていれば刺激に弱くて長時間の戦いには向かないかも知れないが、そう言う場合は何度か戦いを挑めば問題ない。それに、一回目は果てても二度目の戦いは耐久力が増している。俺はそれを経験的に知っている。
 髪の毛は脳を保護する目的で生えているもんだ。脳は人体で極めて重要な器官であり、それを保護するという人体の構造は理にかなっている。
 つまり、生まれついて保護されている部分というのは守る必要性があるから保護されているわけである。だから、先端を保護する皮を除外するというのは論外であり、つまり外科手術などで除去する必要は全く無い。
 そりゃ、耐久力を上げて長門のテクニックを長く享受したいって願望はあるさ。だけどな、耐久力が上がるって事は感度が下がるって意味だ。持続力が伸びるなら良いが、この方法では意味がない。上手い飯をすぐ食うか、普通の飯を長時間食うかを比較するようなもんだ。俺なら前者を選ぶね。
 俺の事はともかく、長門の事を考えると耐久力を上げた方がいいんじゃないかって? そのへんは抜かりがない。長門の薦めてくれたビール酵母でスタミナはアップしているからな。その分、回数を増やせば問題はないって事さ。ありがとうエビオス、これからもよろしく頼むぜ相棒。
 つまり、今の防御力でヒットポイントを上げていくのが俺に課せられた使命ってわけさ。それに、考えてみたら俺の防御力が上がれば長門はそれに対応した攻撃力を備えて攻撃してくる可能性もある。そう考えると、今の俺の路線は間違っちゃいない。そうだろ?
 最初に比べ、長門はかなり進化した。ウブだった長門と一緒に成長したこの俺が言うんだから間違いないぜ。いや、最初からそれなりのテクニックは備えていた。うん、アレは凄かった。俺自体もそう言う経験に慣れていなかったってのもあるが、あれよあれよという間に……ああ、すごかったねアレは。具体的にどう凄かったかは長門が青い小冊子にまとめてくれたからそっちを各自参照してくれ。アレは凄かった。うん。
 いや、話が微妙にそれちまったな。ともかく、長門は最初から凄かったわけだが、今はそれよりも更に凄くなった。色々な書物を読んで研究したって言ったっけな、前に聞いた時に驚いたもんだ。
長門、それ何を読んでるんだ?」
「解体新書」
 驚いたね、杉田玄白だぜ。他にもアインシュタイン博士やフロイト先生の書いた物も参考にしたって言ったっけな。具体的にどういう風に参考にしたのかはいまいちわからんが。聞いてもわからなかった。
長門……はぁ……はぁ……すごかったぞ……今のは何だったんだ?」
相対性理論を応用した」
 そこで長門は笑うように言ったんだっけな。
「相対性足コキ論」
 そうそう、そんな名前だった。何がどう相対性なのかはわからないが、何かが相対性なんだろう。俺はよくわからんが、最高だったのは事実だ。長門のテクは最高だ。
 フロイト先生の方はよくわからん。精神的な方面から責めてくれるんだろう。実際、長門の言葉責めもすごいんだぜ。普段は口数が少ないから特に最高だ。あの長門に冷めた目で罵られるんだぜ。そりゃ、普段とのギャップもあってそのインパクトはすごいもんさ。ああ言うのギャップ萌えっていうんだっけな。違うか? まあいいさ。
 他にも、ティーン誌なんかも読んで色々研究してくれる。それが全て俺のためだって思うと、天に昇るような気持ちだね。
 もし長門が浮気したら……考えたくもないし、あり得ないだろう。しかし、あれらのテクニックが俺以外の男に使われると考えると、ああ、昔じゃ考えられないが、今なら自殺しかねないな。すっかり長門の虜さ、俺は。
 まあともかく、そんなわけで俺は今のこの状態に満足している。だから皮を手術する必要なんてないのさ。俺は誇りを持ってこの状態を貫くぜ。その方がいいよな。なあ、長門
「耐久力があって持続力もあればなお良い」
「そうか」
 俺はチラリと下半身を見て、切るかどうか迷うのであった。