続・むらびととじぬしさん2

 この物語はむらびととじぬしさんの続編その2です。


その1
その2
その3
その4
その5



 翌日よくじつむら広場ひろば人々ひとびとあつまっていました
 その中心ちゅうしんには、昨日きのういてきぼりにされた自警団じけいだんの、バラバラばらばら死体したいがあります
 死体したいまわりの地面じめんは、んで赤黒あかぐろ変色へんしょくしています
地主じぬしくびおそいかかってたんだ」
 昨日きのうさきした自警団じけいだんさけびます
「やっぱり地主じぬし悪魔あくまだったんだー」
地主じぬしのろいだー」
 それに同調どうちょうして、村人むらびとたちに恐怖きょうふ蔓延まんえんしてきます
くび供養くようしたらどうですか」
 神社じんじゃ神主かんぬしさんがいました
 じつ神主かんぬしさんは生首なまくびさらしてくのはくないとおもっていたのです
たと災厄さいやくをもたらすれいでも、自分じぶん供養くようする人々ひとびとには危害きがいくわえないのですよ」
 村人むらびとたちはその内容ないよう理解りかいすることはできませんでしたが、なんとなくそうすればのろいがなくなるとかんじました
「やろうやろう」
 こうして、村人むらびとたちは生首なまくび供養くようすることにしました



 神社じんじゃむらわかおとこたちが祭壇さいだんつくり、それにくびせました
 くび周辺しゅうへんにおそなものき、村人むらびとたちがそれをかこんでいます
「では、供養くようはじめます」
 神主かんぬしさんがうと、村人むらびとたちはいの用意よういはじめました
いかりをしずたまえー」
 神主かんぬしさんがいのはじめます
いかりをしずたまえー」
いかりをしずたまえー」
 村人むらびとたちもおなよういのりの言葉ことばとなはじめます
地主じぬしさん、ははー」
「ははー」
「ははー」
 神主かんぬしさんが平伏ひれふすと、村人むらびとたちもおなよう平伏ひれふします
いかりをしずたまえー」
いかりをしずたまえー」
いかりをしずたまえー」
地主じぬしさん、ははー」
「ははー」
「ははー」
いかりをしずたまえー」
りをしずたまえー」
いかりをしずたまえー」
地主じぬしさん、ははー」
「ははー」
「ははー」
 その儀式ぎしき五時間ごじかんほどつづき、わったころには夕方ゆうがたになっていました



 そのよる神社じんじゃふたつの人影ひとかげがありました
たたりがなんだー」
たたりがなんだー」
 二人ふたり棒切ぼうきれを使つかって祭壇さいだん破壊はかいしています
 むらでも有名ゆうめい乱暴らんぼう夫婦ふうふで、信仰心しんこうしんまったいのです
生首なまくびささものなんて生意気なまいきだー」
 つまそなえてあった果物くだものをむしゃむしゃとべます
おれたちでっちまえー」
 おっともおそなもの鷲掴わしづかみにすると、むしゃむしゃとはじめます
「うまいうまい」
「うまいうまい」
 二人ふたり物凄ものすごいきおいでおそなものべてしまいます
 なつ台風たいふう田圃たんぼいねながしてしまっていたので、飢餓状態きがじょうたいだったのです
「あれ」
 つま生首なまくび指差ゆびさして驚愕きょうがく表情ひょうじょうかべました
「どうした」
 おっと生首なまくびますが、とくわったことはありません
 しかし、つま生首なまくびつめたままからだをがたがたとふるえさせています
「わー」
 つま生首なまくび背中せなかけると、げるようにはしします
「あぁっ」
 しかし、つまあしもつれさせてころんでしまいました
大丈夫だいじょうぶか」
 おっと近付ちかづいても、つまたおれたままです
「あれ」
 そのとき背中せなか気配けはいかんじたおっと生首なまくびかえりました
「ぎゃわぁー」
 なんと、生首なまくびちゅういておそろしいかおをしていたのです
たすけてーたすけてー」
 つまいてしますが、おっとあしもつれさせてころんでしまいました
たすけてーたすけてー」
 どうしてかあしうごきません
 そんなおっとに、生首なまくび近付ちかづいてました
だれかーだれかー」



 つぎあさむら中心ちゅうしんながれるかわには二人ふたり死体したいかんでいました
 死体したいかわみずでふやけ、みずしずんでいる状態じょうたいでもぶよぶよになっていることがわかります
祭壇さいだんこわされてものらかされていました」
 神主かんぬしさんがいます
「そうえば、この二人ふたりむかしから信仰心しんこうしんがなかったな」
 村人むらびと一人ひとりいます
二人ふたりむらよりも自分じぶんたちのことかんがえるやつらだ」
むらたたられても、自分じぶんたちが満腹まんぷくになればいとおもっていたんだ」
「そうだ、んで当然とうぜんだ」
 村人むらびとたちのこころはかなりすさんでいるようです
「ところで、祭壇さいだんこわされたらどうなるんだ」
おれたちにもたたりがるのか」
 村人むらびとたちが神主かんぬしさんにります
「あいつらは地獄じごくってもいけど、おれたちはにたくないぞ」
「そうだそうだ」
「なんとかしてくれよ」
 村人むらびと懇願こんがん必死ひっしです
 すこかんがえて、神主かんぬしさんは決意けついしました
「もう一回いっかい生首なまくび供養くようをしましょう」
「でも、それだけで大丈夫だいじょうぶなのか」
まえよりも立派りっぱ祭壇さいだんつくれば大丈夫だいじょうぶです」
 こうして、ふたた村人むらびとたちは生首なまくび供養くようをすることにしました



 翌日よくじつ神社じんじゃ境内けいだいでは村人むらびとたちが祭壇さいだんつくはじめていました
れー」
 おおきないしはしらなわしばりつけ、村人むらびとたちはそれを石畳いしだたみまわりにてようとします
ちからよわいぞー」
「そっちもれー」
 ぐらぐらとれて、てるのはむずかしいです
 それでも、なんとかはしらちました
ったー」
 このようにして、夕方ゆうがたになったころには四本よんほんはしらちました
出来できたー」
「やったー」
祭壇さいだんだー」
 祭壇さいだんうより、それは神殿しんでんでした



はじめましょう」
 いしはしら中心ちゅうしんち、神主かんぬしさんが宣言せんげんしました
南無阿弥陀仏なむあみだぶつ南無阿弥陀仏なむあみだぶつ
 神主かんぬしさんにわせて、村人むらびとたちもいのはじめます
南無阿弥陀仏なむあみだぶつ南無阿弥陀仏なむあみだぶつ
南無阿弥陀仏なむあみだぶつ南無阿弥陀仏なむあみだぶつ
 神主かんぬしさんは大空おおぞらあおいで両手りょうてそらけます
偉大いだいなるセトせとしん御加護ごかごをー」
 村人むらびとたちも神主かんぬしさんとおなうごきをします
偉大いだいなるセトせとしん御加護ごかごをー」
偉大いだいなるセトせとしん御加護ごかごをー」
 突然とつぜん神主かんぬしさんが全身ぜんしんおおきくすりました
ウンダバダバダバダウンダバダバダバダうんだばだばだばだうんだばだばだばだ
 白目しろめいて神主かんぬしさんがさけぶと、村人むらびとたちもおなじようにします
ウンダバダバダバダウンダバダバダバダうんだばだばだばだうんだばだばだばだ
ウンダバダバダバダウンダバダバダバダうんだばだばだばだうんだばだばだばだ
 神主かんぬしさんが突然とつぜん地面じめんすわって胡座あぐらをかきました
アブラカダブラカダブラカダブラあぶらかだぶらかだぶらかだぶら
 村人むらびとおなじようにとなえます
アブラカダブラカダブラカダブラあぶらかだぶらかだぶらかだぶら
アブラカダブラカダブラカダブラあぶらかだぶらかだぶらかだぶら
エコエコアザラクエコエコアザラクえこえこあざらくえこえこあざらく
 神主かんぬしさんが裏返うらがえったこえとなえると、村人むらびとたちもおなじようにします
エコエコアザラクエコエコアザラクえこえこあざらくえこえこあざらく
エコエコアザラクエコエコアザラクえこえこあざらくえこえこあざらく



「やってられるかー」
 れたころ突然とつぜん村人むらびと一人ひとり神主かんぬしさんになぐりかかりました
「わー」
駄目だめだよー」
「うるせー」
 ほかひとたちがめにはいりますが、かれはぼかぼかと神主かんぬしさんをなぐつづけます
「こんなことやってたすかるはずがあるかー」
 結局けっきょくかれさえられましたが、儀式ぎしきはそれで中止ちゅうしになってしまいました



 翌朝よくあさめた神主かんぬしさんはそとさわがしいのにきました
 いや予感よかんがしてそとると、境内けいだいはしらところ村人むらびとたちがあつまっていました
 なんと、そこには昨日きのうあばれたおとこいしはしらしばられたなわくびっていました
 それははしらてるとき使つかったなわで、てたときのままはずさないであったものです
儀式ぎしき邪魔じゃましたからたたりがあったんだ」
 村人むらびといます
はや儀式ぎしきをやりなおさないと、きっとおれたちもんでしまうー」
にたくないー」
儀式ぎしきをやりなおしてくれー」
 村人むらびと神主かんぬしさんにりますが、神主かんぬしさんはきびしいかおをしています
途中とちゅうめた儀式ぎしきをやりなおしたら、余計よけいれいおこるんですよ」
「だったらどうすればいんだ」
方法ほうほういのか」
 村人むらびとたちが神主かんぬしさんをさぶりますが、神主かんぬしさんはなにこたえません
 そして、ちいさくいました
「もう無理むりです」