続・むらびととじぬしさん1

 この物語はむらびととじぬしさんの続編その1です。


その1
その2
その3
その4
その5




 地主じぬしさんがんでからすこったころ、あるうわさむら蔓延まんえんしていました
神社じんじゃいた地主じぬし生首なまくびが、よるひかるんだ」
 だれしたのかわかりませんが、うそようなそんなうわさ村人むらびとあいだささやかれていました
 食糧難しょくりょうなん殺伐さつばつとしているため村人むらびとはそのようくらはなしこのむのでしょうか、うわさまたた村人むらびとあいだ蔓延まんえんしました
 うわさ村中むらじゅうささやかれるようになると、うわさ内容ないようわりました
生首なまくびが、よるになるとうごすんだ」
自分じぶんからださがして、田圃たんぼまわりを徘徊はいかいしているんだよ」
した使つかっていずりまわっているんだ」
毎晩まいばん一軒いっけん一軒いっけんのろい言葉ことばって、もと場所ばしょかえってくんだ」
 時間じかんつにれ、うわさはどんどん具体的ぐたいてきになっていきます



「そんなの、うそっぱちだ」
 村人むらびと一人ひとりいました
 かれ佐吉さきちというおとこですが、自分じぶんではむら一番いちばん勇敢ゆうかんだとおもっています
 しかし、村人むらびとかれたんなる法螺吹ほらふきの馬鹿者ばかものだとしかおもっていません
おれてやるよ」
 へん恰好かっこうけて、村人むらびとたちに宣言せんげんしました
 じつは、かれおなむらのお朱鷺ときこいをしていて、彼女かのじょ素敵すてきだとおもわれたいのです
 お朱鷺ときむら大人気だいにんきおんなで、佐吉さきちなんかにこころうばわれるはずはいのですが、佐吉さきち自分じぶんほどわきまえていないのです
「いつくんだよ」
ったふりをするだけだろ」
 あまりにも村人むらびとたちが信用しんようしないので、佐吉さきちれました
今夜こんやだ、今夜こんやってやる」



 そのよる佐吉さきち一人ひとり神社じんじゃました
 暗闇くらやみなか鳥居とりい不気味ぶきみかびがります
こわいよーこわいよー」
 村人むらびと大見得おおみえったものの、じつ佐吉さきちこわいのが苦手にがてなのです
 でも、佐吉さきち見栄みえりなので、このままかえるわけにはいきません
 生首なまくびうごかないこと確認かくにんして、お朱鷺ときにかっこいいとおもわれたいのです
 べつにそんなことをしてもお朱鷺とき佐吉さきちきになることなどかんがえられませんが、佐吉さきちはそれが理解りかいできるほどの知能ちのうっていません
「どこだー」
 生首なまくびいてあるだいさがしますが、くらくてなかなか見付みつかりません
 足下あしもと注意ちゅういしながらあるき、なんとかだいえるところまでました



 そのときれい生首なまくびえました
「うわあ」
 なんと、きりなかえたくびは、ひかっていたのです
「おたすけー」
 尻尾しっぽいて佐吉さきちします
「ひゃあ」
 しかし、あしもつれてそのころんでしまいます
「うわーうわー」
 そのまま佐吉さきち神社じんじゃ石段いしだんころちて全身ぜんしんつよちます
いたいよーいたいよー」
 それでも、佐吉さきち恐怖きょうふいたみをわすれ、なんとかいえまでかえことができました



生首なまくびおそってたんだー」
 佐吉さきちは、自分じぶん怪我けがをそう説明せつめいしました
 よくると佐吉さきち怪我けがあきらかに捻挫ねんざ打撲だぼくなのですが、村人むらびとには判断はんだんする能力のうりょくはありません
「どうやっておそってたんだ」
くびそらんでおそいかかってたんだ」
 村人むらびと普段ふだんなら佐吉さきちこと信用しんようしないのですが、いま村人むらびと恐怖きょうふつつまれているため、こんな荒唐無稽こうとうむけいことでもしんじてしまいます
 この一件いっけんで、村人むらびとはどんどん狂気きょうきおちいって、ついには自害じがいするひとあらわれました



 こうなると、むらまもっている自警団じけいだんもこれを見過みすごせなくなりました
「みんなでけばこわくないさ」
 うわさ真相しんそうたしかめるため、数人すうにん神社じんじゃおとずれました
 今日きょう佐吉さきちときよりもきりふかく、すみつぶしたようにくらで、鳥居とりい不気味ぶきみかびがっています
くらいなー」
こわいなー」
 徒党ととうんでましたが、それでもこわがるひと何人なんにんかいます
 使つかえないやつというのはどこにでもいるものです
「うわぁわわぁ」
 鳥居とりいをくぐったとき自警団じけいだん一人ひとり境内けいだいほう指差ゆびさしてさけびました



 なんと、生首なまくびがぼんやりとひかって、空中くうちゅうでゆらゆらとれていました
「うわわわー」
「ひゃわぁー」
「あひいー」
 その悪夢あくむよう光景こうけいに、自警団じけいだんたちはなかこしかしてしまいます
 すると、生首なまくびれながらゆっくりと自警団じけいだん近付ちかづいてます
「ぎゃぅわー」
「ひゃぁー」
 おそれおののき、自警団じけいだんたちは我先われさきにとします
「うわぁー」
 一人ひとりたおれましたが、ほか人達ひとたちかれ無視むししてってしまいます
ってよーってよー」