今日の長門有希SS

「おはよ、キョン
 登校した俺に声をかけてきたのは頬杖をついてぼーっとしていたハルヒだった。見たところ機嫌はよくも悪くもなさそうだ。
「一人か?」
 教室にいる間は誰かと話していることが多い。一人で座っているのを廊下から見た時はまた仏頂面でも浮かべているかと思ったものだが。
「涼子が来てないのよ」
「そりゃ珍しいな」
 クラス委員長をやっている朝倉は真面目である。いや、クラス委員長であるかどうかに関わらず朝倉はそういうやつで、特に何かがなければ朝からいるはずだ。少なくとも遅刻間際に来る俺よりは格段に早い。
「風邪でも引いたのかしら?」
「かもな」
 長門や朝倉は万能で宇宙人であり、風邪など引かないように思えるが実のところそうでもない。今までにも何度か風邪でダウンしていたのを見たことがある。
「メールで聞いてみたらどうだ?」
「もしそれで寝てるのを起こしたら悪いじゃない」
 他人の都合など考えないようなハルヒではあるが、相手が万全でない時はそれなりに気が付く。まあ、相手が万全であればこうはいかないが。
「もし風邪なら、お見舞いにでも行こうかしら」
「本人に聞いてからだぞ。俺たちにうつすのが困るって嫌がるかも知れないしな」
 もし本来地球上にない病原体が原因で、俺たちにも感染するものだとしたら、朝倉もそれは望まないだろう。猿など人間以外から感染した病気によって大惨事になったのは実際にあったことで、映画などにもなっている。
「じゃあ、あとで電話を……って、風邪なら昼頃まで寝てるかも知れないし……」
 連絡のタイミングを考えてハルヒは頭を抱えている。仮に病気だったとしてもずっと寝ているわけではないだろうが、どのタイミングで起きているのかは難しいところだな。
「ちょっと出てくる」
 まだ時間もあることだし、こういう時は頭を悩ませるより事情を知っている奴に聞くのが一番だ。その相手は隣のクラスにいる。
「よう」
 タイミングがいい、というよりはわざわざ俺に会わせてくれたのだろう。教室の外に長門が立っていた。
「朝倉のことか?」
「そう」
 わざわざ事情を説明しに来たということは、珍しく寝坊して遅刻しているだけということもないのだろう。
「風邪でも引いたのか?」
「違う」
 風邪ではなく学校に来れないとなると、あまりいい状況には思えないな。
「どうしたんだ?」
「見てもらえばわかる」
 と言うと、長門は回れ右をして歩き出す。人目のあるところではよろしくないようなので、俺は黙ってその後に続く。
 特別教室の並ぶあたりまで移動して長門は足を止めた。さすがに朝っぱらからこのあたりに来ている奴はいない。
「見て」
 言って長門は抱えていた鞄を廊下に起き、ゆっくりとジッパーを開けていく。
「な――」
 思わずそれを見て声を出してしまう。
 鞄の中には朝倉が入っていた。以前に妹が俺の旅行用鞄の中に入っていたことがあるが、それとはわけが違う。
「あちゃくらりょうこ見参ー!」
 人形サイズの朝倉がそこにいた。