今日の長門有希SS

 サンタクロースと言えば赤と白のあの衣装が定番である。その色のイメージは赤と白で有名な某世界的飲料会社が作り上げたものであるとの説が存在するが、実のところそれ以前から赤かったという話もあり、実際のところは知ったことではない。
 ともかく、今となっては赤と白の組合せを見ると紅白まんじゅうかサンタクロースを連想するのが一般的なわけだ。


「SOS団のテーマカラーも赤と白にしようかしら」
 わけのわからないことを言い出すのはもちろんハルヒに他ならない。
 年度末ともなると赤と白の衣装に身を包んだ者を見かけるようになる。別にそう言う趣味ではなく、ケーキや鶏肉や玩具の販売促進のためである。
 ともかく、うんざりするほど見かけるそれに嫌気がさしたのか、ハルヒがぼそりとそう言った。
「で、赤と白にしてどうする気だ」
「見かけた人があたしたちを思い出すのよ」
「生まれる前から定着しているサンタのイメージにぽっと出の俺たちが並ぼうってのか」
「違うわ」
 ニンマリと笑う。
「越えるのよ。街であの衣装を見たらSOS団を思い出すくらい、あたしたちのイメージを定着させてあげるわ」
 無茶を言うな。
 まあ、俺の中ではメイド服を見たら朝比奈さんを思い出すくらいには定着しているわけだが、サンタクロースの場合は話が別だ。今から俺たちが年がら年中サンタの衣装を着て過ごせばそう思われるようになるかも知れないが。
「その手があったわね」
 いや、やろうなんて言ってないぞ。それに、もしそんな風にしても俺たちSOS団はサンタのコスプレをしているという認識が拡がるだけであり、やはりサンタを越えることは不可能だ。
「確かにあんたの言うことも一理あるわね」
 わかってくれて何よりだ。
「衣装以外で赤と白のイメージを付ければいいのね」
 また妙なことを言いだしやがった。
「古泉くん、どう思う?」
「衣装以外ですか、難しいですね」
 難しいなら思いつかなくてもいいぜ。そのまま有耶無耶にして別の話に移行すりゃいい。なんとなく、嫌な予感がするからな。
「何か、赤と白を印象づけられるような出来事を起こせばいいのですが」
「ふうん、なかなかやりがいがありそうね。赤と白……うさぎ、血まみ――」
「やめとけ」
 例えハルヒの考えている方向性で俺たちのことを印象づけられたとしても嫌な予感しかしない。今後この街の者が赤と白のものを見るたび、SOS団のことを頭によぎらせつつ「嫌な事件だったね」と語り継ぐような。
 将来的にどうなっているか、知る方法がなくもない。
「ところで、朝比奈さんは赤と白でSOS団を思い出しませんよね?」
「ふぇ?」
 俺の言っている意図を理解していないところを察するに、ハルヒがやろうとしていることは少なくとも朝比奈さんが未来でいた地方まで影響していないことがうかがえる。このあたりに住んでいたかどうかはわからないが。
「安心しました。やっぱり赤と白と言えばサンタクロースですよね」
「……そうですね」
 何ですか今の間は。まさか、未来世界で別の色の衣装を身にまとっているのですか。
 と、小声でそのような会話をしていると手を引かれる感覚があった。
「……」
 袖を持って俺の顔を見上げているのは長門である。
「どうした?」
「わたしにも聞いて」
 赤と白のことだろうか。まさか、宇宙人が観測しているサンタクロースが別の色なのではあるまいな。
「……長門は赤と白と言ったら何を思い出す?」
「あの日でも我慢できないあなたの性欲」


 さて、こういった言葉を聞き漏らさない奴が俺たちの身の回りには存在する。
キョン! 今のどういうこと!?」