今日の長門有希SS

 SOS団に入ってから、週末はほぼパターン化されている。
 いつもの駅に集まり、いつもの喫茶店でクジを使ってグループ分けをして不思議を探すという名目で街をぶらつき、昼食のために合流してからまたグループ分けをして探索を再開。実際にハルヒが不思議なことを発見することをよしとしない者が多い中、この探索に実りがあるはずもなく、俺たちはただ一日を無駄に過ごすことになる。
 しかしながら、毎回全てが同じになるわけではない。本来の目的が果たせないことは毎回共通しているのだが、細かい部分で違いが生じる。もちろんクジによって分けられる顔ぶれも違うのだが、他にもいくつかある。
ハルヒ、どこ行くんだ?」
 今回もそんな小さな違いの一つ。駅前の広場から喫茶店に向かうと思いきや、曲がるはずのところを直進してしまう。
「たまには違う店にしたいのよ。いつも同じ店じゃ飽きるでしょ?」
「そうか」
 本当にただそう思っただけなのだろう。ハルヒの気まぐれに理由を求めても仕方ないし、どうせ何か言ったところで意志を曲げることはできないだろうし、そもそもどうしてもあの店じゃなきゃいけないということは全くない。ハルヒの足の向くまま駅の近くを歩き回り、一件の店の前で足が止まる。
「ここにするのか?」
「そうしたいんだけど……やってないわね」
 言われてみると、洋食店らしきその店はまだ準備中のようだ。モーニングセットなどをやっている喫茶店やチェーンのファストフード店などはともかく、個人経営の飲食店などは昼まで営業しない場合が多い。
「どうすんだ?」
「やってないんじゃ仕方ないわ。これ以上探すのもめんどくさいし、戻っていつもの喫茶店にしましょ」
 さすがのハルヒでも準備中の店に無理やり押し入って営業を始めさせたりするほど非常識ではない。後ろ姿に少々落胆の気配がにじんではいるが、ひとまず諦めたようだ。
「でも昼はここで食べるわよ」
 はいはい。


 午前の探索は何事もなく終わって俺たちはまた駅前に集まった。喫茶店もクジも探索もいつも通りだったが、集合時間だけは少し早かった。
「そんなに楽しみだったのか」
「悪い?」
 まあ別に悪くはないが。
 どことなく上機嫌な後ろ姿を見ながら歩いていると、くいっと引っ張られる感触があった。
「どうした?」
 服を掴んでいたのは長門だ。いつの間にか隣に来ていた長門は、俺の顔を見上げている。
「わたしも少し楽しみ」
 そうか。


 それから俺たちは洋食店に入り、早めのランチを満喫することになった。