今日の長門有希SS

 いわゆるスイーツというものは値段が高い場合が多い。飲食店で食べるのが特に高価であり、ケーキ屋や和菓子屋で買う、コンビニで買うなどと徐々にグレードが落ちていく。
 そういったものはスーパーでも売っており、コンビニよりも更に値段が下がる。特にスーパーでは賞味期限が迫った商品は値引きをされるので、かなり安く買うことも可能だ。
 更に安いのは自分で作る場合だ。昨今の社会情勢で小麦粉などの値段に変動があったかも知れないが、それでも既製品を買うよりも原材料費は遥かに安く抑えることができる。しかし、ケーキなどの焼き菓子を作るには様々な器具や設備が必要となり、手間もかかるので慣れていないと気軽に作れるものでもない。
 しかしながら、それほど手間をかけなくても作れるものはある。
「……」
 長門が手に取っているのもそんなもののうちの一つだ。牛乳に混ぜて固めるデザートで、色々なフルーツの味がある。我が家でも妹がねだった時などに親が買ってくることがあり、何度か作っている。
「食いたいのか?」
「少し」
 そのわりにはじっくりと箱を眺めているようだが。
「買って帰るか」
「そうする」
 と答えるものの、長門はそれを買い物カゴに入れようとはしない。
「どうした?」
「一つに絞れない」
 イチゴとブルーベリーとピーチがあり、長門はそれらの箱を持ち上げては戻すというのを繰り返している。この商品自体はもっと種類が多かったはずだが、この店ではその三種類が売られている。
「全部買っておけばいいんじゃないか? そんなにすぐ悪くなるものでもないだろ」
「……」
 長門は驚いたように俺を見つめる。どうした、さすがに三つは多いってのか。
「素晴らしい案」
 そうか。


 今から食後のことを考えているのか上の空の長門と料理を作る。
「危ないぞ」
 タマネギを切りながら危うく指を切りそうになっている。
 やれやれ。
「先にあっちを食うか」
 食前にデザートを食うのもどうかと思うが、このままではまともに飯を作れない可能性がある。食器棚からイチゴ味の箱を取り出し、冷蔵庫から牛乳を持ってくる。
「待って」
 どうした、やっぱり食後に作るか?
「ピーチ味を食べたい」
 それじゃあこっちを作るか。
「それと」
 まだ何かあるのか。
「牛乳を量るために計量カップが必要」
 そうか。