今日の長門有希SS
たまに、疲れているのになぜか寝付けないことがある。布団に入って眠ろう眠ろうと意識するのはむしろ逆効果とも聞いたことがあるが、眠ることができないとどうしても考えが後ろ向きになってしまう。
いっそのこと、布団から抜け出してのんびりしているといいのだが、それで眠気がやってこない可能性もある。とりあえず体を休ませているだけましかと思いながら、固く目をつぶって横になっている。
さて、そのような状態では小さな物音でも気になるものだ。外を吹いている風の音、遠くを走る車の音まで聞こえてくる。
そんなこんなで布団の中でもぞもぞと身をよじらせていると、
「眠れない?」
不意に声がかかった。
目を開けて正面にあった長門の顔と対面する。一足先に眠っていたはずなのだが、物音で起こしてしまったのだろうか。
「いい」
ぽん、と布団の上から軽い衝撃があった。掛け布団の上から肩のあたりを軽く叩かれた。
そのまま、ぽん、ぽん、と繰り返し衝撃がある。
「ねーんねん、ころーりー」
どうした。
「子守歌」
そうか。突然歌い出したからちょっと驚いてしまった。
「もう一度」
宣言して、長門は再び子守歌を歌い始める。最初は驚いたが、布団越しに伝わる衝撃と、静かに淡々と歌われる子守歌を聴いていると不思議と心が安らいで、
「すーすー」
自分で寝るなよ。
外に出ていた手を掛け布団の中に戻してやり、長門の顔を見ていると妙に心が安らいだ。
幸せそうな顔だ。一体こいつはどんな夢を見ているのだろうかね。
そうこうしているうちに、最初にあった強迫観念のようなものはすっかりなくなっていた。あれほどうるさいと思っていた外からの音もすっかり聞こえない。
眠れなかったらまた長門に歌ってもらえばいいさと、軽い気持ちで目を閉じる。