今日の長門有希SS

「ねえキョン、あんたどこにエロ本とか隠してんの?」
 ある日の放課後、いつものように古泉とテーブルを挟んで人生ゲームなんぞをやっていた時、まさしく唐突にハルヒがそんなことを口にした。
「なんだって?」
 聞こえてはいたのだが、俺の聞き間違いだと信じたい。
「エロ本よエロ本。ビデオとかDVDとかでもいいけど、とにかくエロい物よ。持ってんでしょ?」
「ノーコメントだ」
 持っていないと言えば嘘になるが、そんなことをハルヒに教えられるはずがない。
「大体、なんでお前はそんなことを聞こうと思ったんだ?」
「仮にあんたに何かあった時に団長のあたしが責任を持って片づけてあげようと思ったのよ。あんたが古泉くんと今やってるゲームみたいに人生山あり谷ありでいつどこで何が起きるかなんてわからないのよ。あんたの遺品整理してる時に妹ちゃんが見つけたらショック受けるじゃない」
 確かに妹の目に触れないようにしてくれるのはありがたいかも知れないが、ハルヒにそんなことを教えたらどんな弊害が起きるかわかったもんじゃない。
「大丈夫よ、あんたがどんな性癖でも引かないで処分してあげるから。あんたのことだからどうせ特定の髪型ばっかりとかそんな感じでしょ? だからさっさと教えなさい」
 しつこく追求してくるハルヒに溜息が出る。やれやれと部室を見回してみるが、助け船は出そうにない。
「断る」
「ひょっとして、あんた妹モノばっかり集めてんじゃないでしょうね。それだったらちょっと引くけど目をつぶってあげるわ」
 放っておけばハルヒの妄想はどこまでも加速しそうだ。誰かなんとかしてくれ。
「それは違う」
 助け船が現れた。先ほどまで読書をしていた長門だが、本を閉じてハルヒの方に顔を向けている。
「確かに彼は幼い女性を好む傾向にある。そのため、妹系の作品も所有しているものの、それは本質的な部分を表してはいない」
「有希、どういうこと?」
「彼の所有している作品では背が低く小さい胸が多い。そして、パッケージでメガネをかけていて作品中ではメガネを外しているものが多い」
 なんだそのピンポイントな性癖は。
「髪型は!? ポニーテールとか多いんじゃないの!?」
「どちらかというとショートカットが多い。なぜなら」
 長門はちらりと俺の顔を見てから、
「それ以外はわたしが破棄したから」


 もちろんそれからハルヒに追求されたのは言うまでもない。