今日の長門有希SS
「天使で無くなればいい」
事も無げにそう言った長門。
いや、天使ってのは例えであってだな、朝比奈さんは別に天使ってわけじゃ……いや、天使っぽくはあるのだが。
「涼宮ハルヒはあなたを清純で清らかなものと考えている可能性が高い。それが天使。そして、天使のようなに清らかな存在ならば、排泄機能が無い方がそのイメージに合致する」
なんとなくそれっぽいと言う理由で変わってしまった、と言う事か。天使そのものでないとはハルヒももちろんわかっているが、出来るだけ天使に近い存在であって欲しい、と。
しかし、いくらなんでも行きすぎだとは思うが。
「それは、あなたが天使という言葉を出した事が原因。朝比奈みくるのイメージと、天使のイメージとが上手く結びついてしまった」
えーと……もしや、この騒動の原因は俺なのか?
「間接的な原因になる」
「焚き火の近くに火薬を置いたくらいの責任でしょうか」
「それくらい」
つまり、ほぼ実行犯って事じゃないか。
「その件については今は関係ないのでまた後で。ともかく、その認識を変えれば解決する。方法は二種類あり、一つ目は天使が排泄行為を行うと涼宮ハルヒに思わせる事」
なんだそりゃ。
「こちらは非常に困難。だから、朝比奈みくるが天使のような存在であるとの認識を変える」
「わ、わたし、何をされるんですかぁ……?」
耐えられなくなったのか、それまで黙っていた朝比奈さんが声を上げた。すっかり怯えた様子であり、先程から長門の発する言葉には不穏な物が多いからそれも無理はない。
「あなたがそれほど清純ではないと思わせればいい。それほど難しい事ではない。天使というイメージはあなたの容姿と、少々浮世離れしているところに原因がある」
浮世離れって点じゃ、昔の長門も人の事は言えないんだけどな。
「あなたの容姿で、恋人がいないと言うのが浮世離れして見える要因だと思われる」
「あの、興味がないわけじゃないんですけど……でも、この時代では……」
そう、朝比奈さんはこの時代の人間ではなく、いずれ元の時代に帰らなければいけない。だからこの時代での恋愛は出来ない。
……自分の事ではないのに、何となくそれを考えるとやるせない。
「涼宮ハルヒはその事情を知らない」
まあ、事情を知っている人間にはわかるが、確かに朝比奈さんの容姿で恋人がいないってのは、興味がない様に見えても仕方ないよな。
しかし、そんな事情がある事はハルヒに知られるわけにはいかない。
「本当は交際に興味がある、と涼宮ハルヒに思わせればいい。演技でもかまわない」
興味があると思わせるって……一体、どうすりゃいいんだ?
「デートの現場などを見せて、恋人がいると勘違いさせればいい。でも、それに協力してくれそうな人間はほとんどいない」
仮に谷口あたりに「恋人のふりをしてくれ」なんて頼もうものなら、変に勘違いしてそれからもストーカー並につきまといそうだしな。そもそも、SOS団以外の人間に事情なんて説明できない。
「そう」
長門はゆっくりと俺達の顔を見回す。
「相手役を外部に求める事は出来ない。だから」
長門の顔がスッと動く。
俺から、その隣に座ってるニヤケ野郎。とは言え、今は全然ニヤケちゃいないが。
「相手役はあなたが適任」
古泉の方に顔を向け、長門ははっきりそう宣言した。