穴埋め小説「ムービーパラダイス」25

 というわけで、俺達は学校の売店に来た。まだ授業を行っている時間の為、廊下を出歩いている人はいない。
「どうして学校に戻ったナリか?」
「昨日の昼、俺と尾崎は学校の購買でパンを買ったし、安藤はケーキを買っていた。それが共通点さ」
「そんなの今に始まった事じゃないナリよ」
「あ」
 確かに、前にも何度かそんな事があった。安藤はパン争奪戦に不慣れな為、弁当のない時は決まってケーキを食べている。
「共通点と言えば、ビデオナリよ」
「いや、それだと安直かと思ったから」
 そう、そんなに簡単な事ではないと俺は思ったのだが、改めて考えてみると自然だしパンというのは考えにくい。
「ビデオを調べるのはいいけど、俺のビデオデッキは修理中なんだよ。岡田君の家で調べる事は出来る?」
「拙者は別に良いナリが、ビデオ部屋は散らかっているナリよ」
「別に部屋が散らかっているくらいは――」
「ビデオテープが散らかっているナリよ」
 それはつまり、岡田君の好きなジャンルのパッケージに囲まれるわけで――
「他にビデオ見れる場所は無いだろうか?」
「ムパラでビデオデッキを使わせてもらえば良いナリ」
 岡田君の人徳ならば、他の店のビデオを見るという本来有り得ない行為があの店で出来るかも知れない。
「そうしよう」
「それでは拙者は先に行っているナリ。待っているナリよ」
 と言うわけで、いそいそと学校を出ていく岡田君。恐らく先に行ってビデオを物色したりするのだろう。
「……こんなところで何をしているのよ?」
 家に戻ってビデオを確保しようと思った瞬間、後ろから声がかかる。
「ああ、お前か」
「こら、学校では先生と呼びなさいと言っているでしょ」
 少し怒ったような口調で答える担任。
 ……聞く人が聞いたら誤解するような台詞の気がするのは気のせいだろうか。それだとまるで、学校以外ではいかがわしい関係であるかのような。
 まあ、俺としてはこの女が教師言う立場でいる事がどうもなじまないと言う事なのだが。
「ところで、こんなところで何しているの? 二人の事は解決したんでしょうね?」
「一応、二人とも家で大人しくしている。とりあえず外の人間に危害を及ぼしてはいない」
「……それ以上危険な事は無いじゃないの」
 その点に関しては同意する。安藤の場合はわかりやすい悪巧みをしている方がなんぼかマシだ。
「何をしていてもいいけど、外に被害を及ぼしたら駄目よ」
 内部的にどうなろうとかまわないという事らしい。
「大丈夫だ、何かやりそうだったら安藤を殺してでも止めよう」
「しっかりね」
 許可らしい。


 というわけで、俺はビデオを取りに家に戻る事にした。