今日の長門有希SS

 少し遅めに起き出した俺は、オーブンでトーストを焼いてイチゴジャムジャムなんぞを塗って食う。
「おはよー」
 顔を洗ったのか、やや顔を湿らせた妹も食卓にやってきてから、パンを持ってオーブンに向かう。
「んーと」
 パンをオーブンにセットした後、何やらごそごそと食器棚をあさっている。
「何だ?」
「ジャム」
「もう出てるぞ」
「じゃなくて、買ってきたの」
 しばらくしてから「あったあった」と茶色の液体が入った瓶と、トーストをのせた皿を持ってきて向かい側に座る。探すのに時間がかかったせいかトーストは少々黒っぽくなっている。
「てか、なんだそれは」
「栗のジャム」
 言われてみれば、そのラベルには栗の絵が描かれていた。
「わざわざ自分で買ったのか」
「うん」
 妹はニコニコと笑いながら、瓶の中にスプーンを突っ込んでジャムをすくい、トーストの上にのせていく。
 粘り気が強く、スプーンからゆっくりぼとぼとと落ちていく感じだ。
 そのまま観察していると、妹はトーストの上に大量にのったジャムをスプーンを使って平らにする。量が多いので非常に分厚い。
「いただきまーす」
 ぱくりと口に入れ、
「……」
 複雑な表情。
「どうした?」
「甘い」
 まあ、それだけ塗ったら仕方ないだろう。
キョンくーん、半分」
 やれやれ。
「もう一枚食べるからそっちに移しとけ」
「うんー」
 妹は新しいパンを出し、自分のパンにのっていたジャムを……って、それ半分以上こっちにのせてないか、なあ?
「おいしいー」
 妹はジャムが適量になったパンを美味そうに食う。コップを出して牛乳を飲み、ニコニコと消えていった。
 さて、残されたパンだが……
 とりあえず上にたっぷりとのせられたジャムをスプーンで伸ばし……ああ、こりゃ多いな。
 一応、食ってみると予想通りかなり甘い。かといって瓶に戻すわけにもいかないので、俺はため息をついてもう一枚パンを取り出し、更に半分に分けて……まあ、こんなもんか。


 結局、この日の朝はパンを三枚食うハメになり、昼飯が入らなかった。