今日の長門有希SS

 前回のあらすじ


 夢+努力=現実


 鶴屋さんだけではなく、朝倉と喜緑さんが合流し八人の大所帯となった。だが、幸いな事に元々女性部屋は広く、例の部屋もあるので収容は問題ない。
「クジで部屋割り決めるわよ!」
 などと言って、ハルヒが女性陣と輪になってあみだくじを作っている。もちろん俺と古泉は蚊帳の外。
「なあ古泉、人数増えたが飯代とか問題ないのか?」
「ここに常駐している人員の人数に比べると微々たるものです」
 確かに、メイドや執事のような人間が飯や風呂の準備などをやってくれている。金が出ているとは思うが、こんなアホな事に付き合わせちまって申し訳ない。
「長々とすいませんね」
 皿を片付けていたメイドの一人に声をかける。
 するとそのメイドは、こちらに向かってニコリと笑い、
「いえ、お気遣いなく」
 と返してくれるものの、いい加減なんとかしなきゃならないよな。
 などと思っていると、
森園生です。以後よろしく」
 そのメイドさんは、何故か名前を名乗ってから去って行った。
 どうして、今さらになって?
「あなたが物欲しそうな目で見ていたからではないでしょうか? かけがえのない仲間ですので、粗相の無いようにお願いします」
 おかしな事を言う古泉の頭を、軽く殴っておく。ま、本気じゃないのはわかってるけどな。
 そもそも、俺には長門というものがいるのだ。他の女性に手を出す事などあり得ないと言えよう。
「……」
 いつの間にか部屋割りが確定したのか、戻ってきた長門が俺の服を引っ張った。
 一体どうした?
「彼女もテコ入れ要員」
 そうか。


 長門のその言葉がどうやら嘘ではなかったらしい事が、風呂に入った時にわかった。
 ここにはシャワーの付いている部屋もあるが、基本的には大風呂を使っている。男女別で時間を区切って利用しており、今は男の順番だ。
「おっと」
 風呂が終わって着替えをしようとしたところで、メイドさんに出くわした。
「きゃっ」
 もちろんこちらは全裸であり、メイドさんの方は両手で目を覆って、手に持っていたバスタオルを取り落としてしまった。
 手伝おうにも、股間をタオルで隠しているので手が使えない。さて、どうしたものか。
「手伝います」
 と、フルチンで爽やかに手伝う古泉。少しは隠そうとしてくれ。
「大丈夫です、彼女は完璧なメイドを演じているだけですから。ドジっ子担当なんですよ」
 とはいえ、女性の前に股間をさらせるほど俺は特殊な性癖を持っていない。
「手伝いましょう」
 と、飯の時は執事の服装だった中年の男性が俺の横をスッと通りタオルを拾うのを手伝う。ちなみに、俺と古泉だけでは広いので、使用人役の人物もたまに風呂に入っている。
 つまり、その中年の男性も全裸である。事情を知らない者が見れば、このメイドの服装をした女性を全裸の古泉と中年男性が取り囲むという非常に奇妙な光景はどう見えるのだろうか。


 それからしばらくして、寝室に戻ると俺のベッドの布団が妙に膨らんでいた。まるで、中に人でもいるように。
 長門か。
 実はこのような事はたまにある。古泉には道に迷って寝室に戻れないような処置を施し、しばらく二人だけの空間を作る事が長門には可能である。その間にたっぷりイチャイチャして、長門が帰ったあとに古泉が「いやあ、迷ってしまいました」と現れて倒れるように寝込むのが通例となっている。
 ともかく、俺は布団越しに長門の体をそっと撫で、布団をめくり、
「ご主人様、大胆ですね」
 もじもじしているメイド姿の森さんを見て硬直した。
「どうして!」
「メイドとはこのような行為をするものと本日知りまして」
 彼女の手には「メイドさん大全」と書かれた本が。表紙にはいかにもアダルトゲームのキャラクターのようなキャラクターが描かれている。
 参考資料が間違っています。一体、誰から渡されたんですか!
「本日いらした緑色の髪の毛をした方から」
 喜緑さんかよ!