今日の長門有希SS
4時間目が終わった直後、ドアの外に珍しい人物を見つけた。
その人物は、俺の方に視線を向けている。それに気付いた俺は教科書やノートも机の上に置きっぱなしでドアまで直行した。
「長門」
黙って俺を見上げているのは、いつも無口な読書好きヒューマノイド・インターフェース。
「あら、どうしたの有希?」
いつの間にかハルヒも来ていた。
ハルヒの席は俺の真後ろだ。俺じゃなくてハルヒを見ていたって事もありうる。
「あたしに用事?」
「違う」
即否定。
長門は無言で、持っていた包みを俺に差し出した。
布で包まれた立方体。
「食べて」
もしかして、これは弁当というものなのか?
「そう、食べて欲しい」
「有希……?」
ハルヒが口をぽかーんと開ける。そんな馬鹿みたいに口を開けていたら、中に虫でも飛んでくるぞ。
しかし……長門が俺に弁当だなんて、どういう風の吹き回しだ?
「精が付くようなものを入れておいた。食べたら元気になる」
せい、って……
「あなたはいつも淡泊。平均的な日本人男性と比べて少し早いし、回数も少ない。もっと頑張って欲しい」
真横から殺気のようなものが立ち上る。
怖いから、今は考えたくない。
「夕飯も元気になるものを用意しておく。解散した後にいつもの場所で」
はっはっは、長門さん、いつも部活(団活)が終わってからこっそり合流してるのは、他のメンバーに俺たちの関係を気付かれないためなんですよ。
一方的に用件を言い終えると、長門は回れ右して帰っていく。
「言い忘れていた」
まだ何かあるんですか。
「今夜は覚悟しておいて」
いつもの無表情に、少し楽しそうな感情を読みとれるのは俺だけだろう。
しかし――
「キョン、聞きたいことがあるんだけど」
万力のような力で肩を鷲づかみされる。まるで空気に色がついたように、暗黒面のフォースが噴出された事を感じる。
俺、放課後まで生きていられるんだろうか。