この物語はむらびととじぬしさんの続編その5です。
・その1
・その2
・その3
・その4
・その5
「おい」
みんながいなくなった後、先に見張りを申し出た男がもう一人に耳打ちします
「どうした」
「やっちまおうぜ」
その言葉に、言われた男は目を見開きます
「お前、自分が言っている事をわかっているのか」
「良いじゃねえか。こんな奴、どうせ死刑になるか村を追放されるんだから、やっちまっても大丈夫だろ」
「しかし……」
もう一人が難色を示しますが、男はやけに殺気立っています
元々自警団はごろつきのような男たちの集団で、彼のようなレイピストも混じっているのです
そして、実は彼は今までに気の合う仲間と何人か村の娘をレイプ殺人しています
「村人にばれたらどうするんだよ」
「お前が言わなきゃ良いんだよ」
男がにやりと笑います
「いくらこいつが言っても、犯罪者の女の言う事なんて誰も信じねえよ」
彼はもの凄い男尊女卑主義者でもあるのでした
「まあ、お前がやらなくても俺はやるからな」
男がにやにやしながらお朱鷺に近付いていきます
お朱鷺が身を捩って抵抗するので、男はなかなか抑えつけられません
「見てないで手伝いやがれ」
目を剥いて男が言いますが、もう一人は困ったようにしています
「手伝わないとお前を殺すぞ」
そう言うと、男は出刃包丁をもう一人の男に向けます
「わ、わかったよ……」
その剣幕に、もう一人の男は渋々手伝う事にしました
「じゃあ、お前は腕を抑えていろ」
もう一人にお朱鷺を抑えつけさせ、男は何度も何度もお朱鷺を凌辱しました
その間、お朱鷺はずっと目をそらして黙っていました
凌辱が一段落した時、お朱鷺が突然抑えられていた腕を前方に振りました
「うわぁ」
抑えていた男はその勢いでもう一人の男に投げ飛ばされます
しかし、男は飛んできた男をかわしました
「ぐぅ」
投げられた男は、地面に頭を打ちつけてぐったりしました
「ふっ」
小さく息を吐くと、お朱鷺は後ろ手に縛られていた縄を引き千切りました
後ろに飛び、先程まで凌辱していた男と間合いを取ります
「てめぇ」
男が飛びかかります
次の瞬間、男は天地が逆転する様な不思議な感覚になり、気付くと背中から地面に思い切り叩き付けられていました
お朱鷺は男から手を放して洞穴から逃げ出そうとしますが、その手を男が引っ張りました
お朱鷺はバランスを崩し、男の方に顔を向けます
次の瞬間――
しゅぱっ
熱い様な、冷たい様な何かがお朱鷺の顔を駆け抜けました
そして、視界が真っ赤に染まって行きます
「このやろぉ」
見ると、凌辱男が片手に包丁を持っていました
包丁の先から血がぽたぽたと垂れているのが見えますが、次第に見えなくなっていきます
お朱鷺は、自分の眼球が真横に切られてしまったのだとわかりました
「うぁぁ……」
目を押さえて、お朱鷺が糸の切れた人形の様にへたり込みます
お朱鷺は暗闇の中にいて、もう自分には視力が戻らないのだとわかります
お朱鷺はそのまま、動かなくなりました
「手こずらせやがって……」
男は近付いて来ると、お朱鷺を押し倒してまた凌辱を始めました
目を
切られたあたりから、お
朱鷺は
何やら
小さな
声で
呟いていましたが、それでも
男は
関係無く
凌辱を
続けました
気絶していた
男が
意識を
取り
戻しますが、もう
男を
止めても
無駄だと
悟って、
大人しく
入口で
見張りに
戻りました
もうお
朱鷺は
逃げる
様子も
無く、
見張る
必要は
無いのですが、
凌辱している
男に
人が
来たら
知らせるように
命じられました
目的がすり
替わっています
そのまま
凌辱は
何時間も
続き、
終わったのは
夜が
明ける
直前でした
「ふぅぅー」
凌辱が終わった後、男は入口の所で壁に寄り掛かってすぐに眠りました
仕方なく、もう一人は見張りを続けています
お朱鷺は横になったままずっと何かを呟いておりますが、何を言っているのかよくわかりません
気になったので近くに行ってみますが、その意味はよくわかりません
多分、壊れてしまったのでしょう
なんだか疲れてしまい、男は目を閉じました
ぎ……
ぎぎぎ…………
ぎぎぎぎぎ………………
ぎぎぎぎぎぎぎ……………………
妙な音がして、男は目を開けました
すると、お朱鷺の上にもやもやした何かが見えます
「うわぁ」
男が悲鳴を開げると、凌辱男も目を覚まします
「何だぁ、うるせぇなぁ……」
凌辱男もそちらを見て、ぽっかりと口を開けます
「何だこりゃぁ」
立ち上がり、凌辱男はそのもやもやした物に近付いて行きます
次の瞬間――
ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃぃ……………………………………
金属が擦れる様な変な音を立てながら、そのもやもやした物が動き始めます
「うわぁ」
凌辱男はあっという間にそれに包まれてしまいます
「うわぁっ、何だこりゃぁっ」
凌辱男がもやもやの中で暴れますが、もやもやは男を包んだままです
やがて、もやもやはそのまま色が薄れて消えていきました
「大丈夫ですか」
声をかけますが、凌辱男は立ち尽くしたままです
気になって体を揺すると、凌辱男は口から涎をだらだらと流して男の方を見ました
「がぁぁっ、腹減ったぁっ」
突然、凌辱男が噛み付いて来ました
「うわぁ」
男は驚いて飛び退きます
「食わせろぉ」
凌辱男が包丁を持って襲いかかって来ました
たまらず、男は逃げ出します
「食わせろぉ、食わせろぉ」
凌辱男は血走った目で追いかけてきます
「何だこれはぁ」
逃げながら、男は原因を考えます
あのもやもやが怪しいのですが、詳しい事はわかりません
山道を逃げていると、先程のもやもやが空に浮いているのが見えました
飛んで来る方向を見ると、どうやら村の中心から来ているように見えます
男は原因を探る為に村の中心に向かいました
すると――
「何だこれはぁっ」
ずずずずず…………
不気味な音を立てて、人間の様な形をした巨大なものが地面から出て来ていました
そして、地面は血の様に真っ赤な液体で満たされています
先程の奇妙なもやもやは、それの口から出ているようです
とぽん………………
奇妙な音を立てて、それが足の部分まで完全に姿を現しました
長い手を拡げ、真っ黒な体が黒い光を放っている様に見えます
ざす――
その時、彼は背中に痛みを感じました
「食わせろぉ」
振り返ると、先程の凌辱男が彼の背中に包丁を突き刺していました
「がぁっ」
凌辱男が包丁を引き抜くと、彼は地面に倒れ込みました
「ひひひひひひひひ…………」
凌辱男は、笑いながら彼の傷口に噛み付きます
「ぎゃぁぁぁぁぁ」
彼は悲鳴を上げますが、凌辱男は気にも留めずに傷口から肉を頬張ります
「もっと食わせろぉぉぉ」
そう言うと、凌辱男は包丁を何度も何度も突き刺しました
「ぎぃぃ…………」
喉を引き裂かれ、彼はぐったりとしてしまいました
「ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひ」
凌辱男は笑いながら、その体を貪り続けます
そして、最後には彼の体を食べ尽くしてしまいました
「これは……いったい……」
奇妙な予感がして外に出てきた僧侶は、村の中心に浮かぶ巨大なものに目を疑いました
それは今迄に見た事も無いもので、まるで地獄から来た様に感じられます
その時――
「食わせろぉ」
いきなり、神主さんが襲い掛かってきました
正気を失った目をしており、まるで何かに操られている様です
「成る程」
僧侶は木刀を構え、神主さんが襲い掛かって来るのを待ちました
「がはぁぁっ」
神主さんが飛び掛かってきます
どすっ
僧侶は神主さんの鳩尾に強い突きを食らわせました
神主さんは吹き飛びますが、すぐに起き上がって襲い掛かってきます
「あれの影響を受けているのですね」
本来なら気絶するほどの勢いで打ち込んでいたので、僧侶はすぐにその理由を確信しました
「てやぁっ」
叫ぶと、僧侶は巨大なものに向かって跳躍しました
向かって行く最中、僧侶は巨大なものの手元に光の塊がある事に気が付きました
「まずいな……」
しかし、足が地面を離れている為、後はぶつかる時を待つだけです
光の塊はゆっくりと大きくなっていきます
「間に合えば、或いは――」
木刀が鈍く光を放ちます
ぎぎぎ……
ふと、僧侶は自分の軌道上に不気味なもやもやが固まっている事に気が付きました
「はっ」
木刀で打ち据えると、それは霧散して地面に落ちて行きました
僧侶がその行方を追うと、そのもやもやは下で見ていた村人に吸い込まれ、その村人は突然暴れ始めました
「成る程」
僧侶は木刀を握り直します
「木刀が当たれば、滅ぼせる可能性はある」
しかし、いきなり光の塊は大きくなりました
「ま、まず――」
その瞬間――
ぱちん。
光の塊が弾けました。
「ぎゃぁぁぁっ」
濃硫酸をかけられた様に、僧侶の体が熔け始めます
そして、衝撃が僧侶を襲います
ぶぅん!
音を立てて僧侶の体は砕け散りました
衝撃に吹き飛ばされ、僧侶は空中で粉々になり、肉片となって地面に振り注ぎます
「食わせろぉ食わせろぉ」
その肉片を、もやもやに取り憑かれて支配された村人たちが拾って食べます
全ての村人はもやもやに支配されるか、もやもやに支配された村人に食べられ、村には正気を持った人間はいなくなりました
巨大なものは雲の中に消えて行きますが、畑には焼き付いた様にそれの影が残っています
やがて、村人たちは巨大なものの影の上で共食いを始め、村はその日の内に滅びてしまいました
おしまい