2006-10-11 続・むらびととじぬしさん 10 絵本 その夜(よる)、神社(じんじゃ)に二(ふた)つの人影(ひとかげ)がありました「祟(たた)りが何(なん)だー」「祟(たた)りが何(なん)だー」 二人(ふたり)は棒切(ぼうき)れを使(つか)って祭壇(さいだん)を破壊(はかい)しています 村(むら)でも有名(ゆうめい)な乱暴(らんぼう)夫婦(ふうふ)で、信仰心(しんこうしん)が全(まった)く無(な)いのです「生首(なまくび)に捧(ささ)げ物(もの)なんて生意気(なまいき)だー」 妻(つま)は供(そな)えてあった果物(くだもの)をむしゃむしゃと食(た)べます「俺(おれ)たちで食(く)っちまえー」 夫(おっと)もお供(そな)え物(もの)を鷲掴(わしづか)みにすると、むしゃむしゃと食(た)べ始(はじ)めます「うまいうまい」「うまいうまい」 二人(ふたり)は物凄(ものすご)い勢(いきお)いでお供(そな)え物(もの)を食(た)べてしまいます 夏(なつ)の台風(たいふう)で田圃(たんぼ)の稲(いね)を流(なが)してしまっていたので、飢餓状態(きがじょうたい)だったのです「あれ」 妻(つま)が生首(なまくび)を指差(ゆびさ)して驚愕(きょうがく)の表情(ひょうじょう)を浮(う)かべました「どうした」 夫(おっと)も生首(なまくび)を見(み)ますが、特(とく)に変(か)わった事(こと)はありません しかし、妻(つま)は生首(なまくび)を見(み)つめたまま体(からだ)をがたがたと震(ふる)えさせています「わー」 妻(つま)は生首(なまくび)に背中(せなか)を向(む)けると、逃(に)げるように走(はし)り出(だ)します「あぁっ」 しかし、妻(つま)は足(あし)を縺(もつ)れさせて転(ころ)んでしまいました「大丈夫(だいじょうぶ)か」 夫(おっと)が近付(ちかづ)いても、妻(つま)は倒(たお)れたままです「あれ」 その時(とき)、背中(せなか)に気配(けはい)を感(かん)じた夫(おっと)が生首(なまくび)を振(ふ)り返(かえ)りました「ぎゃわぁー」 なんと、生首(なまくび)が宙(ちゅう)に浮(う)いて恐(おそ)ろしい顔(かお)をしていたのです「助(たす)けてー助(たす)けてー」 妻(つま)を置(お)いて逃(に)げ出(だ)しますが、夫(おっと)も足(あし)を縺(もつ)れさせて転(ころ)んでしまいました「助(たす)けてー助(たす)けてー」 どうしてか足(あし)が動(うご)きません そんな夫(おっと)に、生首(なまくび)が近付(ちかづ)いて来(き)ました「誰(だれ)かー誰(だれ)かー」