今日の長門有希SS

「これが……なんて、大きいのでしょう」
 緑色の髪をした先輩は、驚愕に目を見開く。太く長いそれは、通常のものよりかなり大きい。
「これは、舐めても折れたりしないのでしょうか」
 ほうと息を吐きながら、根本にそっと手を添える。
「……」
 おずおずと顔を近づける。小さく整った唇から、可愛らしい舌がのぞく。それが、だんだんと接近する。
 ぺちゃり。
 屹立したそれに、舌が触れた。側面からだった。
 ぺちゃり……ぺちゃり……
「美味しい……この、ミルク……」
 うっとりとした表情で舌を動かし続ける。その舌は、とろりとしたミルクのせいで白く汚れている。
 口元から垂れる液を感じたか、彼女は顎から唇まで指でなぞる。ミルクの付いた指は、日光を浴びてテカテカと輝いている。
 しばらく見つめてから、したたる白い雫をその小さな舌でチロリとすくい取った。
「はあ、美味しい……」


「何やってんですか、喜緑さん」
 ここはショッピングセンターのフードコート。長門がいるのは当然だが、本日は朝倉や喜緑さんも一緒にやってきた。そういえば、この四人で出かけるのも、最近あまりなかった……ような気がする。
 で、そこで飯を食おうとしていたのだが、喜緑さんは最初からいきなりソフトクリームを買ってきた。俺と長門はカレー、朝倉はラーメン、喜緑さんだけソフトクリーム。意味がわからない。
「食後のデザートです」
「いきなりじゃないですか」
「お二人を見ているとお腹いっぱいなんです」
「……」
 思わず、長門と顔を見合わせてしまう。
「いえ、朝倉さんと革新派のヒューマノイド・インターフェースのお二人」
「引きこもりだけどサバゲーマニアっ娘がいつの間に!?」
「冗談です」
 くすりと笑う。
「ああ、青春っていいですねえ」
「喜緑さんも初対面の時は彼氏を助けてくれとか言っていたじゃないですか」
「物は言い様です」
「……」
 用法が違うような気がするが。
「とにかくですね、熱々のお二人を見ていると、それだけで空腹も満たされてしまいます。だからこのデザートだけで十分なんです」
 ぴちゃぴちゃ、と口から水音を立てる。無駄にエロい。
「あと、実は家を出る前に菓子パンを食べてしまったのです」
「普通に食ってたんじゃないですか」
「でも、甘いパンってあまり食事って感じしませんよね」
「何を食べたんですか」
「パンの耳にチョコレートがコーティングされたやつ、ご存じありません?」
「あー」
 確かにあれは食事っぽくはない。
「ランチパックを作った廃品利用みたいなパンです。同じメーカーなんですよ」
「はあ」
「普通のチョコだけじゃなくて、ストロベリーとかあって美味しいんですよ」
「はあ」
「でも、ランチパックを作った廃品利用みたいなパンなんですよね」
 なぜわざわざ上げて下げますか。
「とにかく、お腹が一杯なんですよ。専門用語で言うと『お兄ちゃん、オナカいっぱいだよぅ』って感じです」
「専門的すぎますね」
「……」
 くいくい、と引っ張られる。
「なんだ、長門
「そういう台詞が好み?」
「おかしな事を覚えなくていいからな」
「やだ、キョンくんって……そうなんだ……」
「お前もおかしな誤解をするな朝倉」


 ともかく、そんな風に食事の時間は過ぎるのだった。