今日の長門有希SS

 前回のあらすじ。


 長門のためにちんこの皮切るかどうか迷ってる。俺は余っていた方が良いと思うんだけどな。


 体育の授業中。チーム分けをしてサッカーをしているわけだが、俺達は今休憩中だった。別に応援する必要があるわけでもなく、俺はぼんやりと女子がソフトボールをしているのを眺めていた。
 ピッチャーはどうやら朝倉がやっているようだ。軽快にバッターを討ち取ってるようだが、インチキをしちゃいないだろうな? ちょっと不安になる。
「なあ谷口」
「なんだ」
 ソフトボールをしている女子から目を離さず、谷口が生返事を返す。見ているのは朝倉か? まあどうでもいいが。
「やっぱり皮かぶってるとよくないのか?」
 見る対象が多いのかせわしなく頭を動かしていた谷口だが、俺のその言葉でピタリとその動きが止まった。
「誰がかぶってるって?」
 睨むな谷口。いや、別に誰の皮とは言ってないんだけどな。
 ただ単に、一般論の話だ。女にとって、男の皮はない方がいいのか、あってもいいのか。雑誌の広告でタートルネックの男を見たから思っただけだ、深い意味なんてない。
 しばらく谷口は俺の顔を見てから「そうか」とぽつりと呟いた。
「まあ、俺はズル剥けだけどよ」
 と前置きをしてから、
「女は別に余っていても気にしないと思うぜ。何しろ日本人の男なら九割はかぶってるって話だ。まあ、俺はその残り少ない一割だけどな」
 別にそんなに強調しなくてもいいぞ、谷口。お前が剥けてるのはもうわかった。
「なんだキョン、かぶってるのか? 別に卑屈にならなくてもいいぜ。大多数の中の一人ってだけだ、気にするな……まてよ」
 そこで谷口は顔をしかめ、
「変わったモン好きのアイツの事だ、かぶってたらその時が来た時にはり倒されるかも知れないぜ」
 一応聞いておいてやる。アイツって誰の事だ。
「涼宮」
 ボカリと谷口の頭を殴っておく。一体どうしてそんな話が出るんだろうかね。
「はは、確かに剥けていた方がいいかもね。別に涼宮さんは関係ないけど、かぶっていると菌がたまって不潔になるって聞いたことがあるよ」
 と、爽やかに話に加わってきたのは国木田だ。
「なんだ、お前はズル剥け派閥なのか? 泌尿器科に踊らされても良いこと無いぜ」
 谷口が国木田にすごむ。さっきまでの発言だとお前もそっち派閥だろうに。なんだ、お前は皮かぶり派閥に所属するズル剥けなのか?
「そうだ」
 そうか。
「それに、涼宮さんは剥けてるくらいじゃびっくりしないよ」
 と言うと、国木田は小石を使って地面に蛇のような絵を描いた。蛇のようだが、口の部分がかなり下の方まで食い込んでいるな。なんだこれは?
「いっそ、こういう風に二つに割れてるくらいの方が喜ぶと思うよ」
 却下だ。


「どうかした?」
 向かいに座って弁当を食っていた長門が首を傾げる。
 あれからずっと、皮を切るかどうか迷っている。最終的には長門の希望にあわせるつもりだが、お前は耐久力があった方がいいんだよな? だったら切ろうと思うんだが。
「違う」
 長門は首を横に振る。
「包皮の切除は快楽を損なう恐れがある。神経も一部失うから推奨しない」
 じゃあ、どうすればいいんだ?
「会陰尾骨筋。通称、PC筋」
 なんだそれ。
「尿や大便を止める為の筋肉。この筋肉を鍛える事で射精をコントロールする事が出来る。つまり」
 長門が少し、笑ったような気がした。いや、表情はそのままなんだけどな。
「達する前の状態を維持する事が可能」
 長門は立ち上がると、本棚から一冊の本を取りだした。カバーの掛かった本だ。
 長門はそれを俺に差し出した。
「読んで」
 これは一体?
 カバーをめくると、その下にはセックス革命というタイトルがあった。
「絶版だから手に入れるのに苦労した」
 まさか、これを俺のために……
「そう」
 ああ、長門がいじらしい。俺は思わず、立ち上がって長門の体を抱きしめた。
「ありがとう長門、俺のためにこんな……」
「頑張って」
 ああ、頑張るぞ。俺はそのPC筋とやらを鍛えてムキムキになってやる。剥けてないがな。


 そうして、俺のPC筋を鍛えるための戦いが始まったのだった。戦いはまだ終わらない!