(更新7/27 23:40)塩酸に指を入れると骨まで溶ける

 小学生くらいの頃って塩酸や硫酸がものすごい溶解度を持っていると思ってました
 あとアメリカの西側は砂漠になっていてガンマンだらけで、アフリカは大陸全てが砂漠だと思っていたり
 バカです


 とりあえず制作中の新刊の表紙とか貼っておきます
 詳しいことはまた月末あたり



今日のべびプリSS
今日のあずまんがSS 1
 の続きです
 この組合せ、自分以外のどこに需要があるのかわかりません



 ヤンデレの方の進行状況がとても厳しいです
 一応書いてるサンプルはこんな感じ

新刊 シュウマツ

 この家がイベント好きだと知ったのはここに住むようになってすぐのこと。
 僕とのコミュニケーションのためにと交換日記をしている時点でやっぱりちょっと変だし、誰かの誕生日があると毎回ちゃんと祝っている。誕生日なんて、少ない人数の家でもやらないことがあるのに、この家では毎月必ず誰かの誕生日がある。
 もちろん年に一度の行事は絶対に外さない。思い返せば、正月には姉妹だけじゃなく僕にも和服が用意されていたっけ。
 そんなこの家でも、今年が初めてだという行事がある。
「はい、お兄ちゃん」
 と、星花と夕凪が僕にチョコレートを差し出してきた。
 二月十四日、バレンタインデー。女の子が男の子にチョコレートを渡す日。
 まあ本当の主役は女の子だし、この家の姉妹たちも学校とかで誰かに渡しているのかも知れないけど、今まではそれだけ。
 でも今年はこの家に男である僕がいて、みんなで渡すだけじゃなくてパーティーをしようということになったらしい。
「去年までは私がもらってきたチョコを食べるだけの日だったんだけどな」
 いつの間にか隣に座っていたヒカルが、僕の方を見ないでそう呟いた。
 ヒカルは学校の女の子にモテているらしい。実際、紙袋にぱんぱんに入れて持って帰ってきて僕に押し付けたチョコレートの数を見ればそれが嘘じゃないとわかる。
 少しだけ男の子っぽくて、スポーツ万能のヒカル。性格もサバサバしていて女の子に人気があるのもうなずける。
 本当は受け取りたくないのに、押し付けられて断れないヒカルはきっとみんなが思っている以上に思いやりがあるのだろう。苦笑しながらも、少しだけ困っているような表情がヒカルの顔には浮かんでいた。
 それにしても……
「何を考えてるんだ?」
 キョロキョロと見回していた僕の顔をヒカルが覗き込んでいた。
「私以外はみんな女っぽいとか考えてたんじゃないだろうな」
「ええと」
 似たようなことは確かに考えていたけど、そこまで失礼なことは考えていない。
「ここの家の人は、みんな個性的だよね」
「……」
 表情のない顔で僕の目を覗き込むようにしてから「ああ」と呟く。
 ケーキやチョコレートフォンデュを食べている姉妹を見回す。さっき二人揃って僕にチョコレートを渡した星花と夕凪。星花は女の子にしては珍しく三国志が好きで、夕凪は魔法少女に憧れていて……他の姉妹もちょっと変わった子ばかりだ。それぞれが人とは違った趣味を持っていたりして、似たような子は一人もいない。
 この家にいるのは、みんなバラバラだ。
「オマエもだ」
「何が?」
「いきなり連れてこられた割にはそれほど動じてるように見えなかったし、オマエも十分に変だよ」
「そうかな」
 動じていなかったというより、何とも思っていなかっただけだ。この家に連れてこられて、ここの姉妹を家族だと紹介されていたのを、僕は他人事のように思っていたから。
「だから、ここの家なんて言うなよ。オマエだってもうその一員だ」
「……そうかな」
 さっきに比べて、僕は少しだけ返事をするのに詰まってしまった。
 まだ僕にはその実感がない。土日以外はほとんど毎日ここで過ごしているけど、まだ僕にとってこの家をそんな風に思えない。
「オマエもいつかはそうなるさ」
 僕の心境を察したのか、ヒカルがそう言って僕の肩に手を置く。
「どうした? 何かおかしいことがあったか?」
「なんでもないよ」
 僕が考えていたことを教えたら、きっとヒカルは怒るだろう。
 男友達と話しているような気分だったなんて。
 僕と同い年で、僕より少し背が大きくて、髪は長いけど男の子みたいなヒカル。ここの姉妹の中では気楽に話せる。
 わざわざ仲良くしようとは思わないけど、ここで暮らすからには最低限のコミュニケーションは必要だ。
「そろそろ私はあっちに混じってくるよ」
 立ち上がって、ヒカルはちらりと僕の顔を見る。
「お前も、な」
「行ってらっしゃい」
 はぐらかされてもヒカルは怒ったりしないで、ただしばらく僕の顔を見てから、姉妹の輪の中に混じっていった。
 ヒカルの言いたいことはわかるけどまだそんな気分にはなれない。
 ぼんやりと眺めていると、ヒカルはチョコレートフォンデュを囲む星花や夕凪のところに混じって、にこにこと笑いながらクラッカーか何かをチョコレートでコーティングしている。
 あの二人はいつも一緒にいる。確か、寝室が同じなんだっけ。
 一つの家の中でも、これだけ人数がいると仲のいいグループが出来上がる。基本的には同じくらいの年代の子が固まっているけど、氷柱や綿雪みたいに年齢が倍くらい離れて仲がいいこともある。
 でも――
「王子様」
 立ち上がろうとした僕の目の前ににゅっと春風さんの顔が現れる。
「……なに?」
「ブッシュドノエルを切ったんです」
 差し出されたのは、切り株型のケーキが輪切りになったものだ。茶色の部分がチョコレートなんだろう。
「お一つどうですか?」
 皿に入れて手渡されたら受け取らないわけにはいかない。
「ありがとう」
「これ、春風が作ったんですよ。はい」
 春風さんはフォークで一口大に切り取って、僕の口に差し出してくる。
「えっと、あの……」
「はい、王子様」
「……」
 春風さんは僕の口の前からそれをどけてくれるつもりはないみたいで、どうしても食べないといけないようだ。
 無言で食いつくとチョコレートと生クリームの味が口の中に広がった。
「駄目ですよ、王子様」
「え?」
 食べたのに春風さんは少しだけ不満そうに頬を膨らませている。
「ちゃんと、あーんって言ってください」
 そしてもう一度、一口大に切り取って僕の顔の前に差し出してきた。