SS

今日の長門有希SS

SS

「みくるちゃん、なに見てんの?」 活動が終わると俺たちはまとまって下校する。これはハルヒに強制されているわけではないが、どうせ途中まで同じ方向なのだから別々に帰るまでもない。 用事があって先に帰る時は一人で坂を下ることになるのだが、SOS団…

今日の長門有希SS

SS

毎日、放課後は部室で過ごす。それだけを聞けば熱心に活動をしているように思われるかも知れないが、俺たちSOS団はただ時間を潰しているだけで有意義なことをしているわけではない。もしSOS団で費やした時間を勉強していれば成績も上がっていただろう…

今日の長門有希SS

SS

一日の中でも、俺たちが登下校する朝と夜は温度が低くなる。特に冷え込む日であれば、学校に行くのが億劫になるほどだ。 しかしもちろんそんなことで学校を休めるはずもなく、寒さに耐えつつ長いハイキングコースを歩くことになる。それなりに防寒には気を使…

今日の長門有希SS

SS

さて、改めてSOS団について考えてみよう。 俺が余計なことを口走ってしまったためにハルヒによって設立されたSOS団は、これまで様々な活動を行っている。その中には校内での活動も多く、おかげでこの高校ではよくわからないことをする集団として認識さ…

今日の長門有希SS

SS

「すいません、みなさんのアドレスを教えていただけませんか?」 ある日の放課後のこと、授業時間の関係で一足遅くやってきた古泉がそんな言葉を口にした。その手には見慣れた携帯が握られている。 「念のため聞くが、アドレスって携帯のか?」 「ええ」 携…

今日の長門有希SS

SS

前回の続きです。 「じゃあ集計するわよ」 時間ギリギリで折り畳んだ紙を提出すると、どうやら間に合ったらしくハルヒがそれを開く。 「雑煮」 無難なところだが、最初に思いついたんだから仕方がない。マーカーを持った朝比奈さんが、ホワイトボードに「お…

今日の長門有希SS

SS

「やあやあ、お邪魔するよっ!」 放課後、例によって例のごとく無目的な時間を過ごしていると、部室に鶴屋さんが現れた。その両手には大きめのレジ袋が一つずつぶらさがっており、何が入っているのかわからないがぱんぱんにふくれあがっている。 「それ、何…

今日の長門有希SS

SS

「どうぞ」 放課後、部室に到着し椅子に座った俺の前にお茶が出る。この部室の雑務を担当するのは朝比奈さんで、今日も見目麗しいメイド服姿に身を包んでいる。俺は長門と交際しており他の者に心動かされることはないが、朝比奈さんの立ち居振る舞いによって…

今日の長門有希SS

SS

風呂でぽかぽかと体が温まり、眠くなったところで布団に入った途端、ひんやりとした冷気で眠気が覚めたという経験は誰にもあるだろう。寝室は十分に暖まっていても、それまで重ねていた布団は十分に温まっていないわけだ。室温と同じ温度を保つような素材が…

今日の長門有希SS

SS

01/06、01/07の続きです。 「あら、いらっしゃい」 俺たちが長門の部屋を訪れると、エプロン姿の朝倉が俺たちを出迎えた。俺としてはこの部屋に朝倉がいるシチュエーションにすっかり慣れているが、ハルヒたちにとっては違和感があるだろうか。 もっとも、長…

今日の長門有希SS

SS

前回の続きです。 「なるほど、そういった事情だったんですか」 授業の合間の休憩時間、廊下から何かいいたげに教室の中をうかがっていた古泉を発見した俺は、今朝の顛末を説明してやった。ちなみに古泉が来たのは「今日の放課後は部室じゃなくて玄関に集合…

今日の長門有希SS

SS

俺たちの学校は高い場所に建設されており、毎日の登校がちょっとした運動である。下りになる帰り道はともかく、眠気が残る体で長い坂道を登らねばらない朝は拷問にも等しい時間と言える。 だから、学校にたどり着き教室に入る時が、がもっともほっとする瞬間…

今日の長門有希SS

SS

人混みを移動する時、長門は俺の服を掴むことがある。俺より人の流れを上手く読める長門が置いていかれることなど滅多にないが、何となくそう言うのも悪くはないだろう。 こういう時は手を繋ぐことももちろん多いが、そうすると左右に広がってしまうので他の…

今日の長門有希SS

SS

「キョン、ちょっと来てくれる?」 放課後の部室、いつものようにダラダラと過ごしていた時、ハルヒから声がかかった。 「なんだ、今手が離せないんだ」 古泉と勝負の真っ最中だった。こいつはあらゆるゲームに弱く長考に入ることが多いので、どちらかといえ…

今日の長門有希SS

SS

「いやあ、寒いですね」 食事をしていると、そんな言葉が耳に入ってきた。カウンターの中にいる店員が、俺たちから少し離れた位置に座る客に話しかけている。 「そうですねえ、今日は特に寒い」 「風邪とか引いてないです?」 「軽く引いちゃいました」 「温…

今日の長門有希SS

SS

当然のことだが、人間には体毛がある。髪やヒゲや下半身、はたまたわきの下などが代表的なところだが、それ以外でも様々な部分に生えている。腕やすね、胸や背中、それらはまだメジャーな部類で、細かいところでは手の指や甲、それと同じのは足にも存在する…

今日の長門有希SS

SS

旅行中など、枕が変わることで眠れなくなる者もいれば、そうでない者もいる。それは人によって様々だ。 しかし、大抵の者に共通するのは、寝る時ではなく起きた時に「今どこにいるのか」がわからくなることだろう。よほどその場所で寝ていなければ、起きてす…

今日の鳥門有希SS

SS

入学当初から、というより同じ出身中学の奴はそれ以前から、涼宮ハルヒを「おかしなことをする奴」と認識されている。周囲の印象は今も変わっていないし、当のハルヒもそれを裏切ることなく日々その奇行に磨きをかけている。だからハルヒが何か妙なことをし…

今日の長門有希SS

SS

当然のことであるが、生まれたばかりの人間は自分で動くことができない。仮に歩けるようになっても、安全のために行動範囲は狭められているものであり、自由に動き回れるようになるまでにそれなりの年月を要する。 そして、自転車に乗れるようになれば離れた…

今日の長門有希SS

SS

12/18、12/19、12/20の続きです。 最後の演目は団員からのメッセージだった。 「じゃあ、まずはみくるからねっ」 鶴屋さんからマイクが手渡される。その時点で朝比奈さんは涙ぐんでいた。 「あ、朝比奈みくるですぅ」 しゃべり始めるが、朝比奈さんはぽろぽ…

今日の長門有希SS

SS

12/18、12/19の続きです。 「それでは、ハルにゃんの団長卒業式を始めるにょろっ!」 壇上でマイクを持った鶴屋さんが宣言する。その傍らには豪華な椅子があり、ハルヒが偉そうにふんぞりかえっている。 「まずはSOS団の思い出をふりかえってみようかっ」…

今日の長門有希SS

SS

前回の続きです。 「やあっ、準備できてるよっ」 玄関の外で待っていた鶴屋さんに招かれ中に入る。俺たちSOS団は、広い場所が必要になるといつも鶴屋さんの世話になっている。 通された和室の大広間にはいかにもな装飾が成されていた。鎖状になった折り紙…

今日の長門有希SS

SS

いつも騒動に巻き込まれる、もしくは自発的に騒動を引き起こすSOS団だが、原因の大半はハルヒにある。願ったことがなんでもかなってしまうという能力がそうさせている面もあるが、何にでも首を突っ込むハルヒはそんなこととは無関係にトラブルを巻き起こ…

今日の長門有希SS

SS

長門との買い物は日常的に行われるもので、もはやイベントと言えるようなものではない。毎日の生活の中に組み込まれているものを特別扱いする奴はいないだろう。 だが、その日は少しだけ様子が違った。 「デザートが欲しいのか?」 「……」 長門は食事をする…

今日の長門有希SS

SS

ある休日の朝のことだ。 「いってきまーす」 家の中に向かって元気に声をかけた妹は、自転車を引っ張り出してきて俺の横に並ぶ。 今から向かうのは、いつも活動帰りに解散する駅のあたりにある公園だ。長門のマンションからも近い。 で、そこに妹も同行する…

今日の長門有希SS

SS

長門はいつも無表情だ。交際してかなりの月日が経つが、この俺ですら見たところがないのだから、この世界中を探しても長門の顔に表情が浮かんでいるのを見たことがある者はいないだろう。 だが、感情が表に出ないわけではない。表情は変わらなくても、仕草や…

今日の長門有希SS

SS

緊張の糸が切れるという言葉がある。切れるところまで一つの言葉で、緊張の糸が切れなかったというような使い方はあまりされない。切れることにしか存在意義のない不思議な言葉である。 緊張の糸とやらは安心や油断した時に切れるのが定番らしい。ほっとして…

今日の長門有希SS

SS

学校から帰る時に足を向けるのが自宅より長門のマンションの方向で、着替えまで置いてそこに寝泊まりする機会が多いわけだが、一年三百六十五日常に長門と共に過ごすのかというと必ずしもそうではない。自宅に帰り、そのまま翌日まで長門と会わない日だって…

今日の長門有希SS

SS

世の中にはランチタイムというものが存在する。あらゆる飲食店で取り入れられている制度で、夜に比べると手軽な値段で食事が提供されている。その時間だけ値引きされている場合もあるが、ランチタイム専用のメニューなどもある。 しかし大抵の店では平日に実…

今日の長門有希SS

SS

俺たちは少し離れたスーパーに買い物に来ていた。 あらゆる店には対象とする客層があり、俺たちのような高校生を見かけることは少ない。長門との交際は一部の者にしか知らせていないので、こういう状況はありがたくもある。 平日の夕方ならば一人で買い物を…