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今日の長門有希SS

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前回の続きです。 「眼鏡のメイドさんも悪くないわね」 この一言だけで状況を全て説明できているようには思うが、遅れてやってきたハルヒはまず朝比奈さんにターゲットを絞り、持ってきた眼鏡を次々と朝比奈さんにかけていった。まるで着せ替え人形……と言う…

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人間、平穏が一番である。 こういう言葉は高校生としては大人しすぎるように聞こえるかも知れないが、それは俺たちSOS団にとって何よりも貴重なものだ。今はのんびりと、朝比奈さんのお茶を飲みながら古泉と将棋を指しているが、これがいつ破られるかわか…

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前回の続きです。 「……」 「どうかしたか?」 午前は長門と二人で回ることになった。特に目的なくぶらぶらと歩き回っていたが、普段にも増して口数が少ない長門に疑問を覚えて声をかけた。 「考え事をしていた」 「何をだ?」 「今朝の事。朝比奈みくるにつ…

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「来ないわねえ」 ハルヒが携帯のディスプレイで時間を確認して呟く。 とある休日の朝、例によって不思議探索のために集められた俺たちだが、ここにいるのは四人。最後に到着し、集合時間に間に合っているか否かにかかわらず喫茶店の代金を支払わされること…

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「おかわりが欲しい」 放課後の部室、例によって古泉とトランプをしながら過ごしていると、長門の声が耳に入る。特別大きな声を出したわけではなかったのだが、俺と古泉の雑談も途切れ、たまたま静かになっていたタイミングだった。 「あ、はぁい」 朝比奈さ…

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人間はあまり同じ姿勢を保っていられない。授業中、退屈な授業を聞き続けながらもぞもぞと体を動かしてしまうのはよくあることで、教室の後ろの方に座っているとそれがよく見える。授業は一時間弱で区切られているが、大学に行けば二時間分で一区切りになっ…

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学生の活動範囲は狭く、ウィンドウショッピングなどをしている時に知り合いに出くわすなんてことはよくある話だ。俺と長門は秘密裏に交際しているので、見つかる相手がまずいと発覚してしまう恐れがあるが、人の多いところでは細心の注意を払っているので今…

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「どうぞ」 メイド姿の朝比奈さんが俺の前に茶碗を置く。俺はそれを引き寄せ、手順に従って口に運ぶ。 これだけを記すと何度も繰り返された日常の中の単なる一コマに思えるだろうが、実際の所はそうではない。 「あのぅ、どうですか?」 不安げな表情を浮か…

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おまけのついたお菓子は数多く存在する。 有名なところでは一粒食べれば三百メートル走れるという、ある意味どこかの有名少年漫画に登場する豆に匹敵する便利アイテムだが、実際に人間が三百メートル走るために使用されるカロリーが含まれているとかそういっ…

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コストパフォーマンスという概念がある。日本語にすると費用対効果などと呼ばれるが、要するに金額や手間に見合った質のことである。 使われる場面は様々だが、わかりやすい例では食事だろう。特に外食の場合、店によって値段がまちまちで、出てくる料理も違…

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週末になると俺たちSOS団は街に出る。不思議な物事を探そうと町中をぶらつき、結局何も発見できずに終わるというなんとも生産性のない過ごし方だ。 午前中の探索が終わり、俺たちは駅前に集合した。 「何か見つけた?」 もちろん誰も何も発見していない。…

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SOS団のメンバーは俺を含めて五人いる。 団長のハルヒを中心に団員は俺と長門と朝比奈さんと古泉の四人。準団員も含めるとその倍くらいに人数はふくれあがる。 と言ったわけで、俺が部室の扉を開けた時点で誰かがいるのは珍しいことではない。単純に人数…

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「みくるちゃん、ちょっといい?」 「はぁい」 古泉の横に座って俺たちの対局を眺めていた朝比奈さんは、声をかけたハルヒの手元に視線を送ってから立ち上がり、テーブルのティーポットに手を伸ばす。 「ああ、お代わりじゃないのよ。こっち来てくれる?」 …

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冷房病という言葉はあるが、暖房病という言葉はない。この季節ではいまいち実感を持てない言葉ではあるが、ひとまず冷房病について考えてみよう。 夏、本来なら暑い時期に冷房の効いた部屋で過ごす。まあ誰も好きこのんで蒸し暑い空間に滞在したくはない。快…

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「何か食べたい物はある?」 「長門の作る物なら――」 夕方の帰り道。問いに対する答えをそこで区切った。 理由は単純。何かを察知したからではなく、ただ単に電車が通りかかってうるさかったからだ。 「……」 長門はじっとこちらを見上げている。恐らく、あの…

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「ビラ配りっているじゃない」 ハルヒの発言はいつも唐突だ。今日も今日とて部室に引きこもって石を積んでは崩される子供の霊魂よろしく無意味な時間を過ごしていた俺たちだが、ハルヒの言葉でなんとなくそちらに注意を向ける。もちろんハルヒがおかしな発言…

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通常、給食は義務教育が終了すると共に食べる機会がなくなり、大抵の高校では給食制度が取り入れられていない。しかしテスト期間など特別な場合を除き、授業は午前と午後をまたいで行われる。よって俺たちは飯を食う必要に迫られる。 学校での食事は基本的に…

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雪が降ると、犬は庭を駆け回って猫はコタツで丸くなる。これはそれぞれの動物の特性を表しているが、人間にも犬タイプや猫タイプが存在する。 実際、熱さや寒さ、雨や雪にも負けずに遊び回るような奴の心当たりがある。困ったことにそれは俺たちSOS団の団…

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前回の続きです。 土鍋に小豆を入れてすりつぶし、そこに水を加える。これだけなら甘みが足りないがこの部室にはコーヒーや紅茶を入れるために砂糖がある。ハルヒはポットのお湯で溶くと言っていたが、コンロもあったので煮た方が美味いだろう。 具がマシュ…

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今日も平常通りに授業が終わった。俺たちに通常とは違う出来事が降りかかる場合、その大半が厄介事であるが、こう平々凡々とした日常が続くと気がゆるむ。俺は惰性に任せて足を進め、こちらも平常通りであろう放課後を過ごすために部室棟に向かう。 まあ、一…

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今さら述べるまでもないが、長門は読書をしている。それは趣味の領域を遥かに越え、もはやライフワークと言っても過言ではない。 例えば部室にいる時、ハルヒが何かおかしな提案をしたり、ボードゲームに混じったりする以外は、常にページをめくっている。考…

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くるくる、くるくる。 授業中にも関わらず、後ろの席のハルヒは延々とペン回しのようなことをやっている。音は出していないが立派な授業妨害だとは思うのだが、教科担任の教師は見て見ぬ振り。ハルヒに手を出すとまずいということは、生徒だけでなく既に教師…

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寒い。 本当に寒い時には、そのようにしか表現できなくなる。とにかく寒い。体が凍える。 もちろん寒い季節にはそれなりの格好をするわけだが、気温に応じた防寒着を何種類も持っているわけではない。超寒い時の備えなどない。 だから俺たちは、寒さに耐えな…

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放課後のSOS団は基本的に暇である。俺と古泉はボードゲームにうつつを抜かし、長門は書籍に書かれた知識を吸収し、ハルヒはパソコンをやったりやらなかったり、朝比奈さんはティーポット片手にそんな俺たちの間をふらふらと歩き回る。 と、それらは全て暇…

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春眠暁を覚えずと言うが、眠くなるのは春には限らない。春夏秋冬いつでも眠くなる時は眠くなる。まあ冬は寒いのであまりうたた寝をすることは少なく、今日の授業は一分たりとも眠ることがなかった。 とは言え、授業をしっかり聞いていたとは言い切れない。昨…

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犬や猫と言えば、大抵は人間のペットになっているものだが、野良犬や野良猫という言葉があるように、人に飼われていないものも存在する。実際、我が家にいるシャミセンもかつては野良だったしな。 見かける頻度は野良猫の方が多い。首輪を着けずにその辺を歩…

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俺たちの学校は小高い場所に位置しており、そこからほぼ一本道を下ると駅がある。通学する者は大抵そのあたりを通るわけで、知り合いに遭遇する率が最も高いのもそこである。一本道に入ってしまえば、先行する者の足が遅く、それを追う形になっている状態の…

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休日、マンションの長門の部屋。 特に事情がない日はここで過ごすことにしている。いつもSOS団に時間を取られる俺たちにとって、何もない日は貴重なものだ。 だがこのマンションにいるからと言って、必ずしも二人きりになれるわけではない。実際、今日は…

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掃除当番があって、普段より少し遅く部室に行く。ドアを開いた俺が見たのは、少々珍しい光景だった。 まず、俺の定位置に朝比奈さんが座っている。向かい側には古泉が座り、その間には将棋盤がある。 頻繁に見かける光景ではないが、そこまでは珍しいと言う…

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ハルヒがうんうんと唸っている。 俺がそのことに気が付いたのは、本人を見たからではない。正面に座る古泉がどことなく乾いた笑みを浮かべ、ちらちらとそちらを伺っていることに気が付いたからだ。 ハルヒは仏頂面を浮かべてモニタを覗き込んでいた。こいつ…